| レ ・ 魅 セ ラ レ ス ギ |
東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」 ようやくのレミゼレポです。見るたびにうわごとを宙に書き込んでおりましたが、ちゃんとレポも書こうかと。例の如くネタバレ前提、観劇素人の萌え語り、しかも相当腐女子視点になることは必至ですので、ガマン出来ない方は早めに引き返してくださいね。 ちなみに宙での呟きはこちらにまとめてみました。いや、本当にうわごとだ（苦笑） １．レ･ミゼラブルという舞台 もともとミュージカルファンではない私は、今回も「駒田一さんが出るから」という理由だけで観に行きました。言われるまでもなくただのミーハーです。当初はチケットを4回分だけ確保し、そんなに見たら飽きるかなあ？なんて呑気に構えてました。 何しろ、この年になるまでレ・ミゼラブルのあらすじさえ把握していなかった無知な私。恥ずかしいことに、児童書でもまともに読んだ記憶がないのです。うちにあった絵本、挿絵が暗くて怖かったんだもん。高校生の頃にブロードウェーで観たときには、英語の壁と時差のためにほとんど寝こけていて、感想は「ボロ服の女の子（たぶんエポニーヌ）の歌声が可愛かった」のみ。我ながら貧しい感性ですねえ。 さらに持論は「セリフが歌のミュージカルは苦手。歌声にうっとり聞き惚れていると、セリフが頭に入ってこなくて筋がわからなくなるから」でしたし。 それが、今回の舞台ですべて覆されました。歌を聞かせながら、ちゃんとセリフも伝える役者に当たれば何の問題もなし。それどころか、レ･ミゼラブルの音楽の素晴らしさは、音程のないセリフよりも深く激しく胸を揺さぶる。繰り返し同じ旋律を使うところなんかは、ストレート・プレイではできない演出。 あらすじはたしかに、原作の文庫本5冊分を3時間にぶち込んだ大雑把さで、初見にはわかりにくいのですが、逆に回数を見れば見るほど、その世界の深さに引き込まれていくという底なしの仕掛け。2回目の観劇あたりからそれに気付き、チケットを買い足し始めました。さらに原作を読むと、舞台と比較解釈してさらに魅力が増す罠あり。今回は主役だけでも4人のクワトロ・キャストで、演じる役者によって芝居が全然違ってくるし。結局13回観劇し、まさに仕掛けは上々お支払いがふくれてまるもうけ！状態でした。 この舞台、何がいいのか。一口では言い表せません。役者の魅力、演出の魅力、音楽の魅力、照明の魅力、セットの魅力。それにきっと、レ・ミゼラブルという舞台に引き寄せられた客席の熱気もあるんじゃないですかねえ。服用すればするほど引き返せなくなる、麻薬のように危険な舞台でした。 もう、レミゼの世界に浸って帰って来たくない。あの世界に生きたいと思い、実際現在も脳内上演で引きずっている状態です。レミゼに出逢ったのが、経済力のある現在でよかったです。これだけの回数を見られましたから。もちろん、岩崎宏美さんなど見たかった過去のキャストもたくさんいるのですが、それは運命とあきらめるとして。で、ここだけのイタイ話。もしもあと十年早く出逢っていたら、ミュージカル俳優を志していたかもしれない（苦笑）二十年前には演劇少女で女優目指していたくらいですからねー。しかし今となっては自分に役者が無理なのはよっくわかっているので、いやあ、大人になってからこの舞台に出逢ったのでよかったなあと。 ２．駒田一さんのテナルディエ（ここから真面目にネタバレ注意） さて、何と言ってもこの人から。ミュージカル・ファンの間では「やって欲しいと思っていた役」のひとつだったそうですが、レミゼを全然知らなかった私。レミゼ好きの姉（原作を読み、過去にも見たりしている）に「テナルディエってどんな役？」と聞いたところ「コゼットをいじめる宿屋の親父」との答え。うわーぃ、そんな役かい。しかもオヤジかい。と、思ったのが最初でした。←スイマセン、本当に無知なんで。 ところが、フタを開けてみるとテナルディエという役の深いこと！ ポジションはたしかに悪いやつです。しかも、大悪党じゃなくて小悪党です。主人公と正面から戦うのではなくて、陰でこそこそセコイ稼ぎする役回りです。一つ間違うと、イヤなだけの役です。でも駒田さんが演じると、それだけじゃ終わらない。駒田さんの演じるテナルディエはむしろ、堅固な信念を持って戦う主人公達より、客席にいる私から理解しやすかった気がします。理想はあっても必ずしも強く正しく生きられるものじゃない。だって人間、弱いもの。 さて、テナルディエの見せ場で何と言っても印象的なのは下水道でのソロですが、ここでの駒田さんの眼差し！ 前回のレポでも今回のレポでも、また目かよ、ってかんじですが、どうにもあの方の目の魔力にはかなわない。それまでは酔っ払いのオヤジだったり、セコイ乞食だったり、コミカルなダンナだったりするのですが、ほんの一瞬だけ、ゾッとするような怖いような目をするのです。 神様死んでらあ。この世は共食い、殺し合いだ。そうやってでも生きてやる、という残酷で獰猛な、テナルディエの生き方が滲み出る一瞬。それなのにでも、どこかで神様の存在を恐れてもいる目。だって、自分のしている事が「神様から見たら」悪い事だって認識はある。むしろ、神様に見ていて欲しいのかもしれない。もしも神様がいるなら、テナルディエだってドブネズミみたいに地の底を這いまわり、生き地獄に暮らさなくてもいいはず。良心に従って生きていたって、理不尽で辛い目に会うのは、バルジャンやジャベールで証明済み。だから神様にはとっくに絶望して、生き地獄をどこまでも生き延びてやると腹をくくった、暗いあきらめの眼差しでもある。原作の陰鬱なレ･ミゼラブル（憐れな人々）のテナルディエとあわせて、私はそんなふうに感じました。 このへんは完全に私の妄想解釈なので、全然見当違いかもしれません。納得の行く真実を知りたい方は、とにかく駒田さんのテナルディエの目を見るべし。そこにすべてがあります。直近だと、とりあえず博多座ですね（と、博多座の宣伝をしてみる） それとテナルディエは、眉間にしわを寄せて苦悩する役が多い中で、笑いのシーンを仕切るコミカル担当でもありました。客席は憤ったり笑ったり、感情の揺れがあってこそ、悲しい場面でも自然に泣ける。感動のエンディングに向かう客席のテンションの緩急を握るのは、実はコミカルな場面なのかもしれません。そういう「劇場の雰囲気を作る」という点でも、駒田さんにはピッタリの役だったように思います。 あっと、衣装報告をしていませんな。まあ、今回は宿屋の親父→乞食だったので、それほど私のアンテナにはひっかからず。19世紀フランスなので、下半身がタイツなみにピッタリしていて、動きによってはほっそりラインが拝めてドキドキでした。←こらこら。三ヶ月の公演で、駒田さん随分とスリムになったような。それだけハードな舞台＆次の舞台のダンスのお稽古のせいでしょうかね？ ああ、次の舞台の駒田さんを見たい。この方は本当に、いっつも私の予想をはるかに上回る舞台を魅せてくださるのです！ ３．私のベストナイン＋α 先日、某新聞で「レミゼ」プリンシパル・ベストナインを並べた記事がございましたが、私も似たようなことを。まあ、完全に独断と偏見のミーハーなんですけどねえ。 (1)ジャン・バルジャン：別所哲也さん 実は2回しか見てないんですが。なのに、この人の演技はとにかく泣けて泣けて。姉などは司教様が出てくる前で既に顎の下まで泣いてました。とっても温かいんです。ただ舞台に立っているだけで、辛い日々の中で人間らしく生きようと必死に足掻く、その大きな体に嵐のような葛藤を秘めた、けれど表面は穏やかで父性愛に満ちた、まさに「ジャン・バルジャン」が生きてそこにいる。そう感じられました。最初の立ち姿でクると、あとはもう何をやっても泣けてくる。 好きな場面は、やっぱりリトル・コゼットを迎えに行くシーンですかねえ。テナ夫妻に怒れる荒々しいバルジャンと、コゼットに笑いかける愛にあふれたバルジャン。あと、裁判の場面でオクターブ上げて歌うのが好き。一度あれを聞いてしまうと、普通に歌うと物足りなくなる。単純ですが。 前半にしか見なかった今井清隆さんのバルジャンも好きです。これこそ絵本で見たジャン・バルジャン。歌も上手いし、演技も丁寧。9月にもこの人観たらさらにすばらしくなっていただろうなあ、の心残りの人です。 (2)ジャベール：岡幸二郎さん 冷酷なジャベール。潔癖なジャベール。確固たるオレの美学があるジャベール。えぇと、こういう敵役はツボなんです、どうしようもなく（笑）普段クールな男＋感情の突沸＝しづむ萌え萌えの方式ということで。ファンテーヌをこの汚い娼婦が！と足蹴にするシーンとか、優雅な仕草なのにふと「ブチ込むぞ、鉄格子！」とか言っちゃうところとか。 そして何よりオクターブ高い「自殺」の歌唱法。バルジャンの良心の前に、オレの美学の矛盾に苛まれ、張り詰めて張り詰めてきた彼の糸がついにキレてしまったんだとゾクゾクッとしました。この人も社会の矛盾に打ちのめされる、レ・ミゼラブル（憐れな人々）なんですよねえ。理想が高ければ高いほど、汚らしい現実と折り合いをつけるのは難しい。 (3)エポニーヌ：ＡＮＺＡさん 4人とも粒揃いで僅差。でも演技の切なさと、容姿の好み、「エポニーヌはアニメ声」というよくわからん私の思い込みから、ＡＮＺＡさん。声量がもうちょっとあればなあ、というところでした。 ちなみにオンマイオウンで泣けたのは新妻聖子さん。坂本真綾さんはプレビューで一回見た限りなので心残りその2。お正月に観に行きます♪ (4)ファンテーヌ：高橋由美子さん これも理由はわかりません。彼女の演技と歌は、とにかく涙腺直撃。巧みに声に載せてくるコゼットへの思いが切なくて切なくて。臨終シーンでもエピローグの清らかさにも、毎回泣いてました。 (5)コゼット：河野由佳さん こちらもどちらも選べないくらい好きなのですが、あえて贔屓のマリウスとの組み合わせを優先して（笑）河野さん、声も仕草も可愛らしくてとっても好みです。剱持たまきさんには、後半の泣きじゃくるエピローグで泣かされて泣かされて大変でした。 (6)マリウス：岡田浩暉さん 白状します。この方に惚れたせいで、観劇回数がかなり増えました、はい。プレビューで観たときは「まー、地味なマリウス」でスルーだったのですが、二回目からじわじわと。というか、間に他のマリウスを挟んだら違和感が。あれ、私、いつのまにマリウスのイメージが岡田さんで固まってる？状態で。 正直、マリウスって好きなタイプの役ではないんです。原作によれば「夢想家」で、キレると何をしでかすかわからず、貴族のボンボンで、祖父への反抗から来る何ちゃって革命家で、そのくせちゃっかりバルジャンに助けてもらってコゼットと結婚させてもらった挙句、バルジャンを死ぬほど（まあ老衰でしょうが）孤独にした愚かな僕ちゃん。どちらかと言われると、嫌いなタイプかも。 それが、岡田さんのマリウスだけは、愛して守ってあげたい、コゼットと幸せになって欲しい、と心から思えるのです。純粋でひたむきで誠実な彼なら、アンジョルラスがお母さんのように？面倒を見てあげるのもわかるし（このへんはアンジョの解釈で微妙なのですが）、暗く辛い日々を送るエポニーヌの光になるだろうし、コゼットも一目惚れするだろうし、バルジャンが命をかけて救い出し、コゼットのもとに帰したいと思うのもわかる。 何でだろうなあ、と思うのですが。強いて言えば、立ち姿と控えめな存在感ゆえでしょうかね。物語で言えば「王子様」のポジションなのに、ちっともカッコつけていない。いつも腰が引けているような、一歩引いた位置にいる。派手じゃなくて、前述の通りむしろ地味目。革命家の集まるカフェでもぼんやりしていて、周囲が声をかけてくれなければ穏やかに黙っていそう。遅刻したときも、アンジョルラスに声をかけられるまで戸口で待っているし。そのくせ感情表現はすごく素直で、コゼットに恋したときの表情と言ったら、今にもとろけそう。ぽやぽやしていて、片思いしているエポニーヌでさえ応援してあげたくなるほど。 それが、コゼットに恋し、バリケードでの悲劇を体験し、周囲に守られながら生き延びていくうちに、やがて立派な青年になっていく。芯にはもともと強いものを秘めていたのでしょう。結婚式でテナルディエを殴り、エピローグでコゼットをしっかりと抱きしめるマリウスは、もうぽやぽやしただけのボンボンではありません。友の死を、必死に生きて死んでいった人々の想いをその背に負って、偉大なる父・バルジャンを失ったコゼットを守り、社会の矛盾と戦い、理想の明日へと生きていく、力強い「希望」の象徴なのです。 どああ、泣けてきた。いやあ今回、岡田マリウスだけでも泣けますぜ。直接涙を誘う役どころではないですが、エポニーヌの死とバルジャンの死は、マリウスが弱いと泣けません。基本的にバルジャン贔屓なので、バルジャンの死後コゼットを託して大丈夫、と思える好青年に育っていなければ「こらぁ、バルジャンまだ死ぬな！マリウスなんて頼りないのに任せずにお前がコゼットを守れ」と思ってしまういけない観客なのです。 細かいシーンでは、コゼットに恋したときの初々しさ、素直さ、ノロケっぷりが大好き。そして何と言っても歌声！ よく伸びて心地いい、艶っぽい声。ぐるぐるエンドレスで岡田さんの歌声が回りだしたらもう戻れません。客観的に聞くと、片思いのエポニーヌの前でそこまでやるかバカップル・ソング「心は愛にあふれて」は今回の私の大好きなナンバーになりました。 ……随分とまあ語ったなあ（笑）私もすっかり恋に落ちたマリウス状態。 (7)テナルディエ：駒田一さん 言わずもがなですが。というか、もうお一方は一回しか拝見してません。（その一回はすみませーん、マリウスをオペラグラスで追ってました；ミーハーな） 何だってお歯黒塗って頬にも赤い化粧したダミ声の、酔っ払いのオヤジや、スラムの悪党、死体漁り、宴会乞食にまでドキドキしなきゃならないんだろうとは冷静に思ったりもするのですが、この方の魅力には到底勝てませんわ。 で、カーテンコール等で素の駒田さんがふっと出てくると、あっ、そういえばこのオヤジはハンサムで美声の駒田さんだったと思い出してドキドキしなおしている自分がいるあたり、さらにすげえです。 (8)テナルディエの妻：森公美子さん 歌唱力、駒田さんとのアドリブのかけあいが最高！ 宿屋のシーンでも、結婚式でも、歌の合間にチョイチョイと挟むセリフは本当にその場の流れで、思いがけず笑わされたことが何度もありました。 さんざん笑わせるくせに、もちろん歌はばっちり聞かせる。いいですなあ、この組み合わせ。 (9)アンジョルラス：吉野圭吾さん 舞台のアンジョルラスは原作のアンジョルラスとは別物とわかっているのですが、やっぱりアンジョルラスは金髪美形がいいです。金髪にして、さらにフワフワヘアーにしているので、逆さ吊りの美しいこと！ 革命へのちょっとイッちゃってるくらい熱い情熱も、若者特有の危なっかしいほどの直球姿勢も、マリウスを甘やかすところも（笑）好きです。 さて、9人語ってみましたが。ただの贔屓の押し倒しですね（笑）←引き倒しが正しい表現ですが、誘い受けよりむしろ襲い受けのほうが好みなので？こっちの表現にしてみました。 と、＋αということでアンサンブルさんを書く予定だったのに忘れていた； ガブローシュ：宮里駿くん 死ぬ場面の演技がモノスゴイのです。明るくて、健気で、子供なりに精一杯生きているガブローシュの心意気が胸に痛いのです。 リトルコゼット：川井七星ちゃん 可愛いんですよう、お顔が、姿が！ バルジャンに「私の子だ」と言われて微笑むところなんか、うっかりオペラグラスで直撃したらメロメロです。歌もうまいし。 そして実はこの子はリトルエポニーヌも好き。他の子より背が高いので、いぢめっこ役には最適（笑）コゼットを指差すタイミングはオケより早かった気がしますが、ブルーの帽子が似合って目の保養です。 グランテール：伊藤俊彦さん 原作のイメージに近いグランテール。アンジョルラスとの睨み合いで先に目をそらすところが切ないのよ。アンジョルラスを追ってバリケードを駆け上るところも。個人的好みではガブちゃんとの絡みを削ってでも対アンジョ部分を増やして欲しいところ。 司教様：高野二郎さん 「あなたの魂、私が買った」を高らかに歌い上げられるとぞくぞくっとします。結局 高音に弱いあたり、非常に単純な観客（笑）客席にいる私まで思わずいろいろ懺悔し て改心したくなる、涙腺と魂に響く神々しいお声です。エポの死での「彼女を裏切る な」もセリフの割に声が美しいので説得力があります。 ファクトリーガール：鈴木智香子さん ベガーのシーンでの「クソババァー！」を聞くと何故か毎回ストレス解消。工場を 去るときの「ふふふ」笑いは女って怖っ！とゾッとするし。先が楽しみな女優さんです。 ええと(^^;実はまだ続きます。こんだけ書いても飽き足らず、４．シーン片っ端萌え語りと５．原作の学生たちについて書く予定があります。シーンの萌え語り下書きしたら、メモ帳にびっしり5ページって怖いなあ、我ながら。 ここまででゲンナリしなかった人はまたどうぞおつきあいくださいませ。 |
fin. |