５．原作語り

　我ながら、ぎょえー、まだあんのかよ、って感じ（笑）原作語り、というより原作でのバリケードの面々についてちょこっと。マリウス、アンジョルラス、グランテールの三角関係が気になって、舞台を2回見た7月末からゆっくり読んで9月初旬に読了。

　結論：マリウスとアンジョルラスとグランテールに三角関係はなかった（笑）アンジョルラス←グランテールの片思いだけ。そして私は原作アンジョルラスに激しく萌えるでファイナルアンサー。（何じゃそりゃ。単に原作アンジョルラスのことを語りたかったらしいですよ、この人は）

　舞台では比較的バランスのいい人格に見えるアンジョルラスですが、どうやらこれはクールフェラックやコンブフェールの役割をアンジョルラスに寄せた結果のようです。以下、原作の役割について勝手に検証。

【アンジョルラス】革命に情熱をかける学生たちのカリスマ。金髪の美男子。22歳なのに17歳に見える、少女のようなみずみずしさ。炎のように熱く、氷のように冷たい、等と描写されています。

　冷徹な頭脳に激しい情熱をあわせもつ分、人付き合いはあまり濃くなかった模様。「恋人は祖国」と素でぬかしやがるし、生涯にただ二度の口づけは砦のために死んでくれたじいさんの手に。

　マリウスのことは買っていますが、舞台でのように固い信頼関係があるわけではなく、「のんびりして見えるけど、本性は何かを持っている奴だ」という程度。作戦の司令官がコマを見るように見ているだけで、マリウスという人間の本性にまでは触れようとしません。

　バリケードでは、決して前線を離れません。負傷者が出てもバリケードを下りてかばうなんて司令官らしからぬ真似はしないでしょう。そんなことは後方に任せておけばいい。彼の役割は前線での指揮、そしてその戦う美貌こそが仲間たちを勇気つけるカリスマなのですから。また、政府軍の若い砲撃手を撃ってから、ひとすじの涙を流すところも彼らしい。若者同士が殺しあうこの戦の矛盾に気付きながらも、それが戦局だと割り切る自制心は美しくも切ない。

　バリケード陥落時も、冷静に撤退を指示し、体を張って仲間たちを建物内に逃れさせました。このときマリウスがいないことに気付いても、捕虜になったのだろうと推測し、とにかく生きている仲間を逃がそうと命を張る。結局は皆殺しになるのですが、アンジョルラスは冷静な判断で最後まで生き残り、とうとう四方を敵に囲まれれば胸を開いて銃殺を受け入れる。花を殺すようだと撃ち手が怯むほどの潔さ。「目隠しをしてもらいたいか？」に「いや」とそっけなく答える男らしさ。

　そしてともに死のうと駆けつけたグランテールに微笑みかける。きみは死んだふりをしていれば助かったのに、なんて無粋なことは言わない。崇拝者の真の望みを、天使は知っているのです。なんて生き様の美しい男。なんてJUNE。

【グランテール】酒飲みで、アンジョルラスの崇拝者。本来、理想のために命をかける革命には懐疑的。学生の青臭い理想だけでは、世の中が何も変わらないと思っている一人。それでも、だからこそ、正反対のアンジョルラスの理想主義を美しいと思い、惹かれて止まない。彼は何を望んでいるわけでもないのです。ただ、アンジョルラスという美しい光を見つめていたいだけ。わかるなあ、この気持ち。

　バリケードでは戦いに参加せず、それどころか酔いつぶれて死体に紛れて眠っていて、最後の最後でアンジョルラスがまさに殺される場面にやっと正気に帰る。そして、駆けつけて「二人を一発でやってくれ」すごいセリフですなあ。ほほえんで彼の手を握るアンジョルラス。学生運動や戦いにおいてはまったくアンジョルラスに認められたことのない彼ですが、最後の最後で、アンジョルラスを崇拝し最後までともにありたいと願う心情は、受け入れられたのです。わかるなあ、こんな美しい想いは理想です。（これはいわゆる愛とは違うと思うのよ、JUNE的にね）

　ゆえに、舞台でのガブローシュとの仲良しぶりはちょっと謎。むしろアンジョルラス以外に目に入らない人であって欲しい。

【ガブローシュ】舞台ではまるでグランテールの息子に見えた彼ですが（笑）原作ではテナルディエの息子です。母親がちっとも可愛がらずに放置されていますが。舞台よりも、もうちょっと年代が上に設定されているようです。牢に入ったテナルディエを救出する場面とか、よそにやられていた弟たちの面倒を知らずに見る場面とか、名場面多し。人情派で陽気でとにかく粋な奴。最期は、どちらにしてもあっぱれな奴ですが。

【マリウス】原作のマリウスは……うーん、苦手です。祖父への反抗だけで家を出て、学生たちと友達になっても革命家ではなく、コゼットに恋をしたらまったくのダメダメ人間になって働かない・借金する・学生仲間のことは忘れるの三拍子、バリケードに参加したのだって死に場所を求めてのことでしたし。そのくせ、バリケードの危機を救う形になり、いつのまにかバリケードの指導者に。勿論、彼なりに苦悩した末ではありますし、土壇場での強さこそが彼の本質なのですが。本人、その気はないけど運が良くて、周りに愛されて、最後にオイシイところをさらっていくタイプ。

　岡田さん演じるマリウスは夢想家なところとか比較的原作に近いと思うのですが、何でかすごーくいい人なので、原作よりずーーーっと好きです！というか、愛してます。

【クールフェラック】原作では、マリウスの親友はクールフェラック。恋ボケして働くこともできなくなったマリウスを居候させてやり、金まで貸してやる。さらにカフェ仲間の中心人物として、皆に慕われるのもクールフェラック。この役割がそっくり、舞台ではアンジョルラスに移り、明るく陽気なムードメーカーとしての側面だけが舞台では残ったような気がします。

【コンブフェール】彼は原作ではよき「指導者」の位置。これもアンジョルラスに持っていかれたのでしょうね。短縮版ではとくに影が薄くて残念。

　今回の舞台は短縮版とのことで、前回はもう少し学生の個性もあったようです。うーん、そっちのバージョンも見てみたいところですな。

　マリウスをコゼットにとられるくらいならと、砦で戦わせて死に追いやろうとする。原作のマリウスは、エポニーヌに導かれて戦いに参加したのです。そのくせいざとなるとマリウスを庇って自分が撃たれ、最期に「私、あなたをいくらか恋してたんだわ」告白して死んでいく。舞台も原作も切ないですが、舞台のほうが彼女が明るい分、救いがあります。

　と、アンジョルラスを語りたい一心で原作について語ってみましたが、やっぱり舞台とは別物ですよ。一般的には、まず舞台のほうをおすすめいたします。原作は全体に暗いし、長いし、ほとんど救いがないし。私も舞台を見ていなければ、最後まで読めなかった気がする。ただしアンジョルラス萌えの方は、是非とも原作をお試しあれ。

レミゼ基本？レポに戻る

コンテンツに戻る

fin.