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突然ですが、人形エッセイです。長いです。長いだけで何のまとまりも、内容もありません。お暇な方のみ、飽きたらその場でやめる勢いのなさでお読みください。 ○前置き 私は人形が好きである。いわゆる「人形者」である。 現在、愛情を注いでいるのは（株）ボークス製の「スーパードルフィー」という種類の人形であるが、そういえば幼少時にはぬいぐるみを溺愛していたな、と思い出すことがある。 当時の私のぬいぐるみ遊びの仕方には、現在の人形好きだけでなく、創作における「キャラ作り」の原点とも言うべき部分があるとこの頃気づき、思い出を少しじっくりというかダラダラ語ってみたくなった。 ら、何だか膨大になってしまって、本人が一番驚いているのだが。私の人形モノとしての煩悩が膨大なのだと、笑って流せる余裕のある方だけおつきあいいただきたい。 さて、私が一番最初に溺愛したぬいぐるみは「ニャンコちゃん」だったらしい。 らしい、というのは、本人の記憶にないほど幼い頃のことだからである。ようやく物心ついた頃の記憶では、灰色に薄汚れた、毛束がガビガビになった、細長い猫のぬいぐるみの映像がある。 元は、真っ白な長毛種の猫のぬいぐるみだったそうだ。たしかに、白い猫のぬいぐるみを抱いた私の写真も残っている。家族の言によれば、片時も離さずニャンコちゃんを持ち歩き、小さな私が抱えると細長い猫のしっぽや手足は床を引きずり、またさかんにキスをしたり鼻をすりつけたりするので、あっと言う間に汚れていったそうだ。 とにかく本人の記憶にないので、当時の私の中でどんな存在だったかはわからない。 幼稚園に上がる頃、溺愛したのは「ピカ」である。「若草のシャルロット」というアニメに出てくるハムスターか何かのぬいぐるみで、親が弟に買ったものを、私が横取りしたのだ。 記憶はやはり曖昧だが、つぶらな黒い瞳と見つめ合うあの幸福な感覚は、今でも私の中に残っている。一度抱いたが最後、目をそらせなくなり、弟に返せなかった。人形とうっかり見つめ合うと恋に落ちる癖は、年を取った今でも変わらない。 ピカは、幼い私の話し相手だった。叱られたりしたとき、部屋に戻ってピカを抱いて顔を見る。ピカにはアニメそのままの笑った口がプリントしてあったが、上から見下ろすとやさしい慰めの微笑みに見え、少し仰向けると陽気に励ますように笑って見えた。 幼いながらに、人形が本当に表情を変えているわけではなく、角度によって変わって見えるのだという事実を認識し、意図的に角度を変えて見ていたように思う。 ただそうして表情を変えることによって、そこにただの無機物ではない、「ピカ」という人格らしきものが形を取ることを感じたのも同じ時期だ。 ある晩、単純な角度による見え方とは別な要素で、ピカが笑ったような気がして急に怖くなった。その晩は、ピカを押入に閉じこめて、一緒には寝なかった。 その次に、だいたい小学生の間、溺愛したのが「トピーちゃん」である。 ニャンコちゃんやピカは、抱くことのできる「ぬいぐるみ」サイズだったが、トピーは、子供の私の手のひらにちょうど体を握れるコンパクト・サイズだった。頭にひもがついていたところからすると、車内につり下げるマスコット・キーホルダーだったのだろう。 父が、出張先のサービス・エリアで子供３人にお揃いで買ってきたと記憶している。姉は当時好きだった漫画から「トリトン」と名付け、私と弟は当時流行っていた玩具のキャラクターの名前を借りて「トピー」と「クピー」と名付けた。別にその玩具に執着があったわけではなく、ＣＭソングの音感が何となく好きでつけただけの実にいい加減な命名だった。 が、この「トピー」は、その後私の中で、決して他には代え難い人格を得ることになる。 きっかけは、五歳年上の姉が幼い弟妹に教えてくれた「人形を動かしてしゃべらせる」お人形ごっこである。それ以前にも、レゴ・ブロックの人形等で、姉はお人形ごっこで遊んでくれていた。だが幼い私はまだそれほどに人形に強烈なキャラクター性を見出すことができずにいたように思う。 その後、姉が中学へ上がり、幼い弟妹と一緒に遊ぶ暇がなくなると、遊びのリーダーは私になった。お人形遊びは、お人形が生き生き動かなければ面白くない。そこで私は、ちょうど手元にあったトピーに強烈なキャラクター付けをしたのである。 ただこのトピーの強烈なキャラ、意図的にキャラを作ったというよりも、ほとんど自然にトピーの顔を見ている内に生まれてきた人格である。 この感覚は、現在小説のキャラクターを作るときとほとんど同じで、自分がそのキャラクターになったつもりになる。役者が役になりきるような感覚だろうか。すると自然に、そのキャラのセリフや感情、行動パターン、物事の好き嫌いまで自分の中に生まれてくるのだ。傍目には奇妙かもしれないが、トピーというキャラクターを得て以来、私はずっとそうやってキャラクターを作ってきているのである。 ちなみに、幼い当時、同じく役割演技が必要になる「おままごと」は苦手で、ほとんど遊んだ記憶がない。普通の女の子が好む「お母さん」や「赤ちゃん」といったキャラクターには一切興味がなかったせいだろう。それと、自分自身の体ではキャラクター移入のレパートリーが限られ、人形というよりしろが好都合だったらしい。 前置きがすっかり長くなった。要はこの幼少時に作ったトピーのキャラクター設定が、現在の創作におけるキャラ作りの原点になっているのだと気づき、形にして残しておきたくなったのである。 以下、羅列列挙でトピーのキャラクターをダラダラと語る。 ○イヌクマ トピーはたぶん、クマのマスコットなのだろうと思う。丸い顔に丸い耳、丸いしっぽはテディベアの特徴だ。だが体は、四つ足で走っているイヌのようにも見える。当時、幼い兄弟はクマかイヌかで議論した末、「イヌクマ」という新種の珍しい動物だと結論づけた。 「世界に三匹しか存在しない貴重な動物・イヌクマ」それが、トピーの最初の設定である。言い出しっぺはおそらく姉で、実にしょーもない詭弁だが「特別な存在である」という設定は、子供心に大変重要な意味を持ったのである。 ○ルックス トピーはうちに来た当初は、普通に可愛いマスコットだった。しかし、幼い私が非常に乱暴に可愛がったもので（たとえばぬいぐるみを放り投げて、一番遠くへ「飛べた」ことを褒めるのも子供の愛情表現である）、あっと言う間にボロになった。まず片目が取れて綿が覗き、立っていた丸い耳は半分ちぎれて薄く顔に貼り付いた。盛り上がっていた鼻も、平らにつぶれた。ベージュの体は全体に黒ずみテカり、すり切れて薄くなった布から中身の詰め物が抜け、ほっそり痩せた。開いてしまった胸の穴には、手術と称して子供が縫いつくろった跡がある。 こうして文章に書くと、正直スプラッタである。が、子供の私にはそれは可愛く見えた。遊びの世界の設定では「通り過ぎる女の子にキャーキャー言われる美形」に位置づけていたくらいである。イヌだかクマだかわからない動物をつかまえて「美形」というのも妄想力たくましいことだが。 しかも性別は男だった。何故だかわからないが、最初から男だったのである。女の子のキャラより、無意識に感情移入しやすかったのだろうか。 もちろん、大人になった今見ても「トピーちゃん」は可愛い。そしてその思い入れはどうやら、現在の「隻眼」キャラ好きという嗜好に昇華されたようだ。 ちなみに、取れてしまったトピーの片目は、小瓶に入れて大切に保管し、時々「トピーの目ん玉捜索隊」として遊びの小道具に使っていた。弟がそれを羨ましがり、クピーも片目をむしられ、ついでに丸い小鼻までとれてしまった。子供の愛情表現は実に残酷である。 なお、特筆すべき事項として、トピーには「口がない」という特色がある。口は別にむしられたわけではなく、サンリオのキティちゃんのように、口の部分の造形が省略されているのだ。そこに本来あるはずの口は、見る側の想像に委ねられる。 裏返せば、大きく笑った口でも、怒ってとがった口でも、自由に想像でくっつけられる。この「ない口」は、角度によって異なって見えるぬいぐるみの表情変化を、さらに無限大に広げる非常に重要な要素であったと思う。 ○性格 トピーの性格は、ブッ壊れて強烈である。弟の動かしていたクピーが「子供向け物語の主人公」な典型的いい子ちゃんだったので、反動もあるのだとは思う。 が、私が「美形で変人」好きなのは、どうやら当時からの嗜好らしい。そういえば、幼すぎて本人の記憶にはないが「科学忍者隊ガッチャマン」ではベルク・カッツェを気に入っていたそうだ。筋金入りといったところか。 まず何と言っても、トピーはナルシストである。突然発作的に「ボクって可愛い♪」と音程をつけて連呼しながら、飛び跳ねる癖を持っていた。 もちろん動かしているのは私である。右手の親指をトピーの腹に当て、人差し指と中指を添えて顔を前に向けさせる独特な握り方で、十五センチくらいの幅でぴょんぴょん小刻みに跳ねさせて弧を描く。ジャンプ三回目くらいから「ボクってカワイイ」がつぶれて「ブクってカーイー」「ブッてクーイ」になり、五回目くらいには省略形「ブッテー」のみとなり（「可愛い」はどこへ行ったのか？）、トータル十回くらいで飛び跳ねるのをやめる。トピーちゃん的に、それで気が済むらしい。 客観的にケッタイどころかおよそ不自然な癖だが、間が空いたり場が白けたりすると、彼はこの癖を出し、お人形ごっこの盛り上げ役をやっていたようである。 そして一貫して、変人である。思考回路が常人とズレている。 笑い声は「グフグフ」または「ヌフヌフ」。初対面の相手には「ハァイ！」と顔をくっつけてドアップで迫るのが挨拶。自分より体の大きい相手には、敵意がなくともまず頭突き等で威嚇する。頭突きのかけ声は「ドゥッピー！」で、キックは高音の「トー」。声は、普段の私の声より低くつぶれた鼻声になる。バカっぽいが、紙一重の天才ということになっている。 トピーは他人を驚かすのが大好きで「みんな今日は○○をするぞ！」と突飛で勝手なリーダーシップを取る。弟のクピーには兄貴風をふかすが、兄のトリトンはバカにしてからかってばかりいる。結果的に正義の味方のような真似もするが、たまたま気が向いたときだけである。 客観的に列挙すると、どこがいいのかさっぱりわからないが、私が愛してやまないキャラの原型はすべて詰まっているように思う。 自キャラでは、他人から思考回路の読めない嘉、初対面でもやたら馴れ馴れしいハルミ、ナルシストで騒々しいカーマイン。パロ萌えなら、奇人変人の榎木津なぞがかなりトピーのキャラに近い。（なんて言うと榎木津ファンのお怒りを買うかもしれないが、あくまでも私のパロ解釈での榎木津につき、本物とは別人で） 本当にあの頃から、嗜好が変わっていないのだなあとしみじみ思う。 ○ガールフレンド トピーには、しっかりガールフレンドがいた。当時はまだ腐女子ではなかったので、異性の恋人がいたわけである。 親戚のお姉さんが作ってくれたトピーと釣り合う大きさのフェルトのマスコットで「アイリー」という名前だった。アイリーはもともとインディアン衣装の女の子だが、私がフェルトで作った黄色のコンパニオン風スーツを着込み、かなり大人っぽいイメージにしていた。 性格はさばさばしたアネゴ系で、トピーとは互いに呼び捨て、グループ交際の中で口汚くドツキ漫才をするような、およそ色気のない組み合わせ。 萌えキャラ分類をするなら、いつも一緒にいるのが当たり前、長所も短所も了承済みの「幼なじみ」キャラになるだろうか。 なお、弟の動かす典型的いい子ちゃんのクピーにもガールフレンドがいて、人魚姫の「ミリア」という。人魚という理由で悪いヤツら（標本にしようとする動物学者とか？）に狙われ、正義感の強いクピー（と、野次馬トピーたち）が彼女を助けたのが出会いのきっかけ設定だったような気がする。 人魚のしっぽを隠すため、ふんわりした小花柄のロングスカートを履き、ピンクの上着を着た、きわめて女の子らしいキャラクターである。クピーのことは「クピーさん」と呼び、二人はただ寄り添い歩くだけのロマンチックなデートをしていた。 キャラ分類するなら「異界からやって来た守るべきお姫様」というのが、どうも弟の趣味だったらしい。 間違っても、私の中には生まれてこないキャラクターである。このあたりの対比が面白いというか、笑える。 ○パラレル設定 私と弟は当時、トピーたちを使った人形遊びを「人形遊び」ではなく、「トピクピ」と固有名詞で呼んでいた。 当時よく遊んだレゴ・ブロックの人形にも持ちキャラクターはあったが、何故か「レゴ」は「レゴ」であって、キャラクター遊びではなかった。「トピクピ」それだけでハッキリ独立した世界観を持っていたのである。 しかもこの世界設定、実は一つだけではない。パラレル設定がいくつもあるのだ。 いわゆるパロディ同人誌等で「○○のキャラを使った学園モノ」「○○のキャラを使ったファンタジーモノ」があるのとちょうど同じ感覚である。その設定が、あまりにも典型的でまた面白いので列挙する。 ・キョホーボーイ（ヒーローモノ？） 姉が紫の毛糸で編んだ帽子をトピーにかぶせたところ、丸い頭がちょうど巨峰の実のように見えたので、発作的に生まれた設定である。 正義の味方キョホーボーイは、コアラちゃん（弟の持ちキャラ）が困っていると、紫の帽子に黄色のマフラーをなびかせて颯爽と現れ、悪者を頭突き一発で気絶させ、一瞬で帰って行く。 そしてついでに、通りすがる兄のトリトンを、普段トピーの素のままではバカにしているくせに、「お兄ちゃんスキだよ、チュッ」とオデコにキスする仰天行動をとり、気絶させていくのもお約束である。 一瞬しか出番のない、謎なキャラではあるが、ヒーロー設定には違いない。私にかかると、正義のヒーローも変人が理想らしい。 ・ミノ虫ハウス（無人島モノ） 十五少年漂流記のような、無人島に子供だけが流れ着き、そこでサバイバルをするというのもよくあるお約束の設定である。トピクピでも一応そんな発端ではじまり、いつのまにか隠れ家を作ることがメインになった設定が「ミノ虫ハウス」である。 当時、何故か子供部屋には鉄棒があり、私と弟はそれに毛布をかけたり、箱を並べたりして、ぬいぐるみの隠れ家にした。細かいところはよく覚えていないが、学研のオマケを組み合わせたミノ虫（に見えるオブジェ）をつり下げて、ミノ虫ハウスと呼んでいた。 いわゆるおままごとセットは持っていなかったので、ありあわせの玩具を布や服を配置して家具に見立て、ブロックを組み合わせて乗り物なども作った。決してリアルなものではない（というか、他人が見たらさっぱりわからない）が、たとえば乗り物はドアが開くなど妙なところで駆動性があり、想像の中ではしっかり家や乗り物だった。 ・忍者設定 ある意味、基本だったのはこの設定である。幼い私は忍者が大好きで（今でもしっかり好きだが）、トピーたちはすべてのパラレル設定の中でも本業は忍者であった。（何じゃそりゃ） キョホーボーイの運動能力の高さは忍者設定によるもので、ミノ虫ハウスには玄関がなく、柱を伝って出入りする等忍者屋敷の仕掛けがあった。（本当は段ボールでドンデン返しも作りたかったが、設計図まで書いて挫折した）放り投げてジャンプ力を競う等の「忍者の訓練」を定期的に実施し、たまに「ゲニンジャ」という悪の組織と戦っていた。ただし、彼らが仕えるべき主や、影の者の悲哀はなく、いわゆる忍者とはかけ離れた設定なのだが。 ちなみに忍者のトピーとクピーの必殺技は何とオナラであった。しかも、他のキャラのピカとラスカルが「オナラジェット」で空を飛べたり、「オナラバズーカ」になるのに対し、トピーとクピーのオナラは音もなく「金属を瞬時に腐敗させて破壊するガス」と陰湿な設定であった。（子供の頃に考えたこととはいえ、書いてて異常に恥ずかしい設定でゴメンナサイ） さらに笑えるのが、忍者設定ではテーマソングを作っていたことだ。一応音程らしきものがついていて、今でも歌えるのだが、譜面に起こすだけの能力はない（っつかそこまでするような歌じゃない）ので、歌詞のみ記載しておく。（）内に現在の私によるセルフツッコミを入れたものの、どうにもならんネタで申し訳ない；
【トピーとクピーのお話】 ・芸能プロダクション 何と、こんな設定もあった。ぬいぐるみが全部、自らが経営する芸能プロダクション所属の売れっ子アイドルという設定。遊び方は、テレビで好きな曲を録音したテープに合わせて、ぬいぐるみを動かしながらカラオケするだけ。伸ばす音のところでは、ぬいぐるみが高ーく跳ね上がることになる。 なおぬいぐるみによって持ち歌が違うところがなかなか細かい。ちなみにトピーはチェッカーズでも短調の曲、クピーは爽やか系の曲が持ち歌だった。現在の私がチェッカーズの「ジュリアに傷心」を持ち歌にしているのは、この頃トピーを動かしながらさんざん歌ったからである。 ・トランプ あまりにもくだらない設定が続いているので、ついでに書いてしまう。人形を使ったトランプ遊びも当時はしていた。 ゲームの種類は「ナポレオン」である。ナポレオンは本来四人以上で遊ぶルールだが、人間は弟と私の二人のみである。どうやるかというと、ぬいぐるみを輪に並べ、カードを配る。 そして開始前に、八百長タイムが始まる。すべての持ち札を開き、トレードして、強いカードをトピーとクピーに集めるのだ。そしてナポレオンがクピーになるように、副官がトピーになるように、必ず仕組む。トピーの位置づけがナポレオンではなく、最後まで正体の分からない副官というところがミソである。 ゲームが始まると、すべてのキャラを私と弟で相談しながら動かし、もちろんトピーとクピーの大勝利に終わる。 そんな八百長が楽しいの？と覗きに来た親に呆れられたものだが、実際楽しかった。ゲームの結末を楽しむのではなく、予定調和にいかにして至るかの、経過を楽しむ。 前半はわざと危ういカードを出しておき、後半華々しい逆転で盛り上げたり、最後まで正体のわからない副官が、意味深なニヤリ笑いを浮かべたりする、そこが醍醐味なのだ。結局は「トピクピ」の世界観をベースにして、「トランプ」というシチュエーションに当てはめ、想像物語を作ることを楽しんでいたわけである。 このあたりの「パラレル設定」は、私の現在の創作におけるスタイルにもそのまま残っている。 ごくまれに「ストーリー・テラー」という評価をいただくことがあるが、私としては物語そのものを作る力量が自分にあるとは思っていない。とにかくまずキャラを作り込み、それを適当なシチュエーションに当てはめる。すると、勝手に動いて物語らしきものを作ってくれるのだ。あるいは、書きたいシチュエーションが先にあり、そこに至るためのキャラを後から考えて、めざすシチュエーションにたど着くよう動かすのだ。 たとえば、各種パロディ作品や落陽シリーズは、まずキャラ設定ありきのスタイルで、ハルミシリーズはシチュエーション（たいていは、ハルミの決めゼリフ）のためにゲスト・キャラを作り、適当なシチュエーションで動かしてみる（それでついついキャラに引きずられて着地点が予定とズレる）書き方である。 シリーズ・レッドの長編モノでさえ、書きたいシチュエーションのために必死で物語を作っていたりする。最新作の「ロングバケーション・ブラック」なぞは「監視カメラの真下でムリヤリ→それでも赦す」を書きたがったがために、あれほど長ーい前後がくっついてしまったのだ。「ミッション・イン・パープル」は「石の出し入れキス」だったっけか？ 壮大なテーマを狙うのではなく、部分的なシチュエーション・エロが目的なところが、あのシリーズの肝である。 ・学園物（擬人化） さて実は、学園物設定もこっそりあった。ただし、一緒に遊んだ弟は知らない。私が今の創作スタイルの基本にたど着いた高校生くらいの頃に、擬人化（同人モノのお約束）して設定だけ作っていたモノである。 トピーは、前髪を垂らして片目を隠し、後ろ髪をチョロしっぽにしたアヤシイ美形になっていた。髪の色は、ダークブラウンだったろうか。口元にはニヤリ笑いを浮かべ、常に白衣をまとった化学部部長・マッドサイエンティストの設定である。あー、こんなところに現在のオタク好きの原点が（笑）さらに生徒会長とかいうのがお約束。これまたロクなことをやっていない、腹黒系の生徒会である。 ガールフレンドのアイリーは爽やかにテニスをやりつつ、生徒会でトピーと接点があったらしい。 いっぽうクピーは、既に弟のキャラではないはずだが、金髪の熱血サッカー部員だった。ガールフレンドのミリアは当然マネージャーである。二人とも、サッカーに専念するため、生徒会はやっていなかった。まあ、真面目。 結局漫画は描かずじまいだったが、適当なシチュエーションに当てはめればコロコロ動き出す程度の世界観はできていたように思う。今では、あのとき描いた絵をとっくに処分してしまったことが悔やまれる。 ○まとめ さてさて、何という長さになったのであろうか（苦笑）最後まで読まれた方、手放しにお疲れさま！ この駄文、私がもっと年を取って「子供の頃には人形遊びをしたものだけど（おばあちゃんになってもスーパードルフィーでは遊んでいそうだが）、どんなだったかしらねえ」と思い出す手がかりになればいいなーという用途にしか使えないとは思うが、トピーというキャラクターを文字にして残せたことが最大の満足である。以上。 |