| 観れば観るほど「私こんなにこの舞台好きだったっけ？」と、愛しくなる「ダンス・オブ・ヴァンパイア」再々演の感想です。初演初日にポカーンとしたのが嘘のよう。今では勧善懲悪ではない物語が大好きですし、コメディ・シーンは笑いっぱなし、何よりダンスシーンが大好きで、贔屓役者がいない場面でオペラガン見状態。こんなに好きになるとは思いませんでした。 タイトル通り、ヴァンパイアたちがダンスしまくるわけですが、これが大変に私好み。ウィーン版はアクロバティックなダンスでしたが、日本版はクラシック・バレエ調。ウィーンにはいない影伯爵もいて、これがまた非常にイイ！ とくに森山さんを観ていると、不意に涙がこみ上げてきたりします。何でだろうなあ、墓場のシーンとか、エガちゃんみたいな衣装なのになあ。「愛する者たち切り裂くむなしい存在」あたりと、クライマックスで螺旋階段から逆さにぶら下がるところがたまらなく好きです。 そして今回血沸き肉踊ったナンバーは「悪夢」と「永遠」。 「悪夢」は今期シンガーの麻田さんのシャウトが心地よくて、影アルフの東山さんのそうお尻が素敵vvでした。影アルフが噛まれるシーンの表情が秀逸なんですが、今期振付は横顔しか見られなくて残念。その分、床に倒れて、絶望→あきらめ→悔しさ→決意の表情筋と大臀筋の動きをオペラで視姦しましたです。倒れた影アルフを影サラが憐れむように跨ぐ振付が妙に好きです。こんなに性的でいいのか、と興奮する反面、その美しさとストーリーに胸が締め付けられる、たまらない陶酔の瞬間。 それから「永遠」は、これは完全にアンサンブルさんしか出てこない、しかもみんな恐ろしいゾンビメイクなんですが、ゾッとしつつ美しさに引き込まれ、舞台から這い出してきたゾンビたちに恐怖しつつも魅了されました。背中がゾクゾクするこの甘美なひととき、滅多には味わえません。東京千秋楽では一階通路側の席をいただいて、二人も脅かしてもらえて超ラッキー♪ 大阪では上手後方ばかりだったのですが、近くを通るゾンビさんの甲高い奇声が怖くて楽しかったです。ちなみにこのシーンでも東山さんをガン見の私。貴族っぽいジャボ付の服でジャンピングターンとか眼福過ぎる。東山さんの影アルフもゾンビも、相当好きで正直ファンなんですが、たぶん素顔を見たらわからないんだろうな……。 と、いきなりダンスから入りましたが、私のお目当ては駒田一さん、せむし男のクコールさんでした。 クコちゃんはもう、駒田さんとはまた別の愛しい存在になってしまっている感があるのですが、健気で、いじらしくて、たまらなくチャーミング。サラにブーツを届けるときの表情とか、お掃除劇場とか、朝食の支度とか、教授を寝かしつけたりとか、舞踏会の準備とか……いちいち何であんなに可愛いんでしょうねえ。 そんなクコールさんと、今回は衣装のまま握手できる機会があって大感激！ 終演後のロビーで東北への義捐金を募ってたんですね。もちろん中の人と握手してもらったこともありますが、クコールさん＝役を演じているときの役者さんはやっぱり特別な存在なんです。クコたんの手はゴムっぽくて、ちょっぴりイボイボしてました。危うく新しい何かに目覚めそうになりました。 っつか、お掃除に義捐金に司会に、クコちゃんは本当に働き者！ 歌もダンスもない役なのに、存在感抜群でした。ロビーに立つときには何故か若い頃の写真をＩＤカードとしてぶら下げていたりして、そういうスタッフさんのお遊びもまた楽しい♪ ちなみに同じく義捐金で立っていたJenniferさんにうっかり日本語で話しかけてしまったのですが、隣の禅さんが通訳？してくれて「Cawaii」だけ通じたみたいです。カワイイは世界共通語なんだな。 今回の新キャストJenniferさんは、とっても可愛くてセクシーで、歌がうまくて最高でした。パンチの効いた迫力ある歌が素晴らしい。いっそサラでも観てみたい華やかさでしたね。続投を期待します。 それから注目の新キャストがヘルベルト役の馬場徹くん。何しろ前任の吉野さんが世界一美しい強烈なキャラでしたので、荷が重いだろうな〜、ウィーン版みたいな無難なイケメンゲイ風に変えるかな〜と予測していました。が、いい意味で予想を裏切ってくれました。ヘルベルト、オカマが悪化（笑）アイシャドウとかメイクが華やかに美しく、バスルームでの衣装は黒のキャミソールになってました。 同人用語で恐縮ですが、吉野さんがドＳの襲い攻だとすると、馬場さんはドＭの誘い受になってた気がします。新アルフの山崎さんが子供っぽく凶暴なせいもあるかなあ。父上との関係も、吉野さんが複雑な愛憎うずまく義理の息子っぽかったところ、素直に血のつながった息子っぽかったです。あとクコールにもちょっとだけやさしい。クコール劇場で恒例の雪撒きをやらかすのですが、ちょっとだけ遠慮がち。クコールに悪戯して叱られたいＭ息子かもと思いました。 あと「これで許して」とお尻をめくって触らせたり「先に言えよバーカ！」等の、教授とのやりとりもＭっぽくてオカシイ。教授によると「ヴァンパイアの癖にベタベタ汗かきやがって」汗かきらしいですが（笑） 吉野さんのダンスセンスを生かした人外の動きやマント裁きは別として、馬場さんは全体に可愛くて面白いヘルちゃんを作り上げていました。バスルームの場面はやっぱり、腐女子的な萌えだけでなく、ゲラゲラ笑える日本版の演出が好き♪ それにつけても、歌はうまいし、ルックスもいい馬場さん、将来に期待大です。何より感心したのが、初日のダンス指導指名をさらりとこなし「打ち合わせもなしに無茶振りしてゴメンな」と詫びる司会の駒田さんに「つつがなく」と返した舞台度胸。舞い上がらず、出過ぎず、萎縮せず、舞台全体の中で自分の役割というものを感覚的にかぎ分けて職人のようにこなす。こういう感覚に優れた役者さんは実は貴重で、駒田さんや吉野さんに近いものを私は感じました。楽屋口で見かけた姿も、年齢の割りにファン対応も落ち着いた黒髪の青年で感心。これからもいろんな舞台で拝見したい役者さんです！ それから新キャストつながりで、コングさん。サラにデロデロに甘い、裸で客前に出ようとするサラに「ダメー！」高音ボイス多用のダメパパでした。歌唱力は文句なく、キャラ的にも快楽主義的なJenniferマグダと相性のいいコンビでしたね。 コングパパは阿知波ママとも、なかなかイイ関係でした。マグダみたいな恋愛関係でもないし、娘のサラに対する溺愛とも違う、長年連れ添った空気みたいな夫婦。 カーテンコールで阿知波さんとラブラブだったのが、また好印象。だって基本的にレベッカが可哀想過ぎるんですもの、このお芝居。阿知波さんが歌も芝居も素晴らしく申し分ないだけに余計に。今回クコール劇場で「うちの娘と夫はどこでしょう？」と涙し「噛まれる覚悟はできています」とお城に向かう寸劇があって、何となくレベッカの物語が補完された気分です。頑張れ、レベッカ！ 新アルフの山崎さんは、これまでにない逆切れ現代っ子キャラで、とっても新鮮でした。教授にも反抗的というか、最初から自分の興味のあるものにしか反応しない割り切り感で、血と快楽に引きずられてヴァンパイア化していく様が物語と符合して面白かったです。「サラへ」とかはさすがの歌唱力ですし。 ただ、どっちが好みかと聞かれたら、私は浦井アルフですかねえ。でっかい図体して、隙間なくキャーキャーニャーニャー裏声で騒いでいて、もうカワイイの何の。初演はまだヘタレ「男」でしたが、今ではもう人間とは別のヘタレカワイイ「生き物」になっています。通路席ではマイクオフでもずーっと裏声で騒いでいるのが聞こえて愛しさ倍増。すごいエネルギーを消耗するでしょうに、アルフスイッチが入るともうキャーキャー鳴かずにはいられない生き物になるのね。大阪遠征を決意した理由の一つが、浦井アルフをもう一度観たい！だったのは否めない事実。これからも切実に続投してほしいなあ。 そしてサラは、今回の二人は、いまいち私の好みではありませんでした。何せ私のとってサラは仕草の美しさが最重要、ベストは加賀谷サラ（初代影サラ）かもしれないくらいなのです。今回はお風呂シーンでヌーブラ丸見えでガッカリ、着替えシーンも着てるだけっぽく見えてしましました。剣持サラの見えそうで見えないドキドキのお風呂シーン、天然というか白○っぽい危うい色香が懐かしくなった今回。まあ、ああいう役作りは剣持さんのルックスだったからこそでしょうが。 歌唱力は知念さんが安定で、大阪では不調の山口さんを圧倒するほどでした。声質も割と好きなのですが、キャラ的に大人しめで大塚サラが懐かしくなる感じ。高橋サラは元気いっぱい、大塚サラに近い路線で、得意な音域の声がいいのですが、全体的には歌唱力が不安定。ジャンピング噛み付き演出も、受け止めるアルフ役の腰の負担が気になって個人的に落ち着かず。まあ、サラという役は可愛ければＯＫなので、贅沢な注文かな。 おっと、肝心の教授と伯爵に触れていませんでした。 教授は禅さんの中で、どんどん役作りが深くなっている感じですね。理性、知性と叫びながら、他人に認められたいという「欲望」は誰よりも深い矛盾。今期は「感情？ くだらん」のセリフの言い方で客席にハッとさせたり、随所で意識していたように感じます。単純にヴァンパイア＝欲望＝悪ではないこの物語、教授の芝居は大きいなと改めて感じました。 伯爵は……どうしたんですか、今期の山口さん超楽しそう。カーテンコールとか、ＴＤＶ大好き楽しい〜って感じが伝わってきました。正直、今期は歌が不調（本人比）でしたが、キャラ的に伯爵に合ってるからいいや。ウィーン版の重厚で行動派の伯爵とはまったく違いますが、これが日本版の演出、日本のＴＤＶはやっぱり山口さんありきで作ってるんだろうなと思います。息子との関係は、ほのぼの仲良し親子。そして下男との関係は、何か前期までよりイチャつき度が上がったよ？ クコールにお尻に頭突きされると「ああ〜ん」とか悶えるんです、おまいらいったいナニがあった！？ そうそう、あと舞台に関係ないとこですが。帝劇100周年記念の最後の演目だったせいか、ロビーがいろいろ面白かったです。100周年のお花のアーチにコウモリのリーくんが飛んでいたり、役者さんの等身大看板が出ていたり（看板となら2ショット可♪）、観光地によくある顔出し看板で伯爵に噛まれるサラになれたり、劇場スタッフさんたちもマントやコウモリカチューシャを着用だったり。開演前からワクワクしてしまいました。こういう遊び心、個人的に大好きです。ウィーンでもスタッフさんのマント姿にはしゃいだもんなあ。季節関係なしのハロウィンみたいなこの演目、劇場全体で演出するのは大変合っていると思います。 そんなこんなで、最高に楽しかったＴＤＶ。万人にオススメするタイプのミュージカルではありませんが、ハマると強烈なウィルス。またいつかお城に行ける日を楽しみに待ちます、熱烈再演希望！ |