｢レ・ミゼラブルの世界｣駒田一さんトークショー
2013.7.15　三越名古屋栄店

　告知が急で結構大変でしたが、7/9付で三越サイトに情報掲載、Facebookレミゼ公式を経由して姉から私に情報が来たのが7/12夕方。ちょうど7/15の休みが確定したばかりで、バタバタ観劇仲間に連絡を取り、翌7/13は仕事と歯科検診と実家をハシゴしつつ、劇場に問い合わせして、行ってもいいものかどうか迷い……完全地元民向けイベントだったら、遠征は迷惑かしらなんて心配したりもして。7/14朝に同行者が見つかり新幹線手配、夕方に駒田さんのブログでの告知もあって、やっと安心して出発しました。

　会場は三越7階のイベントスペースの片隅、レミゼの写真展をやっているとのことでしたが、キャストのボードとパンフ掲載写真のパネルが5〜6枚あるだけ。映画のDVDを流し、映画のCDやDVDを少し置いている程度。そこにパイプ椅子が50くらい並べてあり、12時15分の時点で既に最前列は荷物で席取りされている状態でした。何とか2列目と3列目に席取りし、三越の喫茶店でランチ。開演20分前に戻ると、席はすべて埋まり、立ち見がたくさん出ていました。

　小さなステージにはテーブルとスツール、ミネラルウォーターは二人分。最初にテレビ愛知の女性アナウンサー・菊池さんが登場し、駒田さんを拍手で迎え入れ。

　今日の駒田さんは、黒い帽子にサングラスを乗せ、薄いブルーのダンガリーシャツ（胸ポケにカラフルボーダー）、グレーの七分パンツ、スニソに白いスニーカー、手にはたたんだ扇子。ヒゲも剃って、こざっぱりした雰囲気でした。

　女子アナ司会がついたせいか？表情もよそ行きのお澄ましモード。と思えば、のっけからマイクではなくミネラルウォーターのボトルに口パクのボケを披露、菊池さんに「駒田さん、マイクはそっちです」つっこませてましたね。さらに「駒田一です。役者をめざしております……って何言っているんだ、役者やってます」こっちは素で言ってしまった感。三十三年やっていても初心を忘れていないということなんでしょう。

　司会者付きのしっかりした段取りのトークで、駒田さんはさすがの話し上手、とーっても楽しかったです。

　最初は30分程度と聞いていましたが、二時過ぎに登場して三時前まで話していたので、一時間近く駒田さんのトークが聞けるという素晴らしい時間でした。

　トークそのものが久しぶりでしたし、他の役者さんが一緒だと進行に回ってしまって、なかなか本人の話が聞けませんでしたからね。真摯にお芝居に向かう語り口、とても貴重な機会。多少の無理をしても、日帰り遠征をするだけの価値がありました。

　本人のブログでも帰りの新幹線で大満足の笑顔。名古屋以外から追っかけたファンにも気づいてもらえたようで、よかったあ。お手紙を手渡しするチャンスはなく、会場の人に預けましたが、ちゃんと本人に届いたかな？

　以下、覚えている限りでトーク内容順不同。自分で思い出し用の覚え書きメモ。

○名古屋はいつぶりですか？

いつだろう？2009年のレミゼでは来てるんですが。サビタというお芝居で来たと思います。最近は名古屋通り越して、大阪とか博多が多くて。

○公演期間が長いですが、体調管理など気をつけていることは？

よく寝て、よく食べること。とにかく寝ないとダメなので、夜は10分でもお風呂につかって、眠れるようにしています。変な話、朝起きると、あーって声出しますよ。ちゃんと声出るかな？って。出るなって安心して、劇場入りして、ウォーミングアップして、発声練習して、ぼくたちは何回もやりますけど、お客さんには一回一回だから……そういう意味では、朝からずっと気をつけてます。本番後は脳味噌の形がわかるくらい気を張っているので、お芝居を離れてリラックスする時間を作るようにしています。飲んだりとか！

○トリコロール新聞で「１人では飲みに行かない淋しんぼう」と書かれていましたが。

だって一人で誰と話すのよ。お酒が好きと言うより、仕事を忘れて別の世界に行ける、いろんな話ができるのが好き。幸い、飲みに行きましょうって誘ってくれる人がたくさんいるから、今の環境はありがたいです。

○健康に気を使っていらっしゃるようですが、今朝は何を召し上がってきましたか？

そば。全然体によくない（笑）そば好きなんで、ここ数年毎朝そばばっかり食べてます。そばと卵焼きとか、そばとシシャモとか。いつも家でそばをゆでて食べてるから、遠征公演の時は、そばを食べられるところを探します。時間がないとコンビニで済ませたりもしますけど、最近コンビニもおいしいから。あと三越さんの地下でね。（宣伝口調）

○地元・名古屋に帰ってくると、必ず行くところやお店はありますか？

三越さんはいつも来ますよ。（宣伝口調）ライオンのお尻を撫でる。三越のライオン前とか、何十年前のデートの約束場所。

あと居酒屋さん。名古屋にいたのは中学までだったので、当時は居酒屋なんか知らないはずなんですが、仕事で来るようになってから探したお店で、ぼく名古屋出身です、と言うと本当によくしてくださって。お店の名前はここでは言えませんが、お母ちゃんのお店とかね、お母ちゃんお店閉めちゃって、ぼくどこ行けばいいのっていうね。（会場に行きつけのお店のお母ちゃんがいらしていたようで、手振ったりしてました）

○役者になったきっかけは？

子供の頃は名古屋で祖父母に育てられていて、夏休みとかに仕事の関係で東京にいる両親のもとに行っていたんです。親がこちら関係の仕事で、15のときに「俺たちは天使じゃない」というお芝居を見て、何で俺はあの舞台の上にいないんだろう？と思って、劇団に入りました。「好きなことをやればいいじゃない」と言ってくれた親のおかげだと思っています。

○役者の醍醐味は何ですか？

子供が憧れる野球選手とかサッカー選手とかパイロットとか医者とか、ぼくは犯罪者の役が圧倒的に多いですが(笑)、犯罪者になりたくてやってるわけじゃないですけど。いろんな職業になれて、表現できて、それを人に見てもらえて、お金をいただけるところ。こんなありがたいことはない。もちろんお金をいただくためには、一生懸命苦しみますが。

役者は点数をつけてもらえない。本番終わって、今日の出来は97点とか出てたら、それはそれで傷つくけど……点がつかないからこそいいんですが、今日はよかったと自分で思っても周囲の評価がよくなかったり、自分では思うようにできなかったときにお客様からよかったですと言われたり、役者は一生そういうのと戦わなきゃならない。これでいいと納得したら役者は終わりで、ずっと進化し続けなきゃならない、ぼくはそう思っています。

○では10月の名古屋公演ではさらに進化した駒田さんが見られるということですね？

（神妙に）はい。……何で自分でプレッシャーかけちゃったんだろ；がんばります。

○好きなことを三十三年も続けて、充実した人生だと思いますが（ここでアヒルみたいに口尖らせてました／笑）、この会場にも今日をきっかけに役者を志す方がいらっしゃるかもしれませんね。何かアドバイスを。

やめたほうがいいよ！（即答、笑）

○（会場に小さな女の子を発見、母親が「この子、ミュージカル俳優めざしてます」と）

レミゼラブルには小さな女の子がぼくたちと共演していますよ。おじさんが生きていたら、一緒に共演できる日を楽しみにしています。

○レ・ミゼラブルは映画を観た方も多いかと思いますが。

映画だと何百回見ても同じだけど、舞台は生ですからね。百回やったら百回違う。一役に何人もいるから組み合わせが違うし、同じ役者との組み合わせでも間合いや空気感が違うし、体調なんかも影響する。舞台はそこが面白いです。

○駒田さんのようなベテランでも今回オーディションを受けたんですか？

もちろん、厳しいオーディションをします。そういう世界ですから。コールバックで何回も呼ばれて、何回も歌う。オーディションでは、数年後の数か月の仕事が決まるということで、すごく気負ってしまいますけど、UKスタッフは稽古場みたいなリラックスできる雰囲気を作ってくれました。でも笑顔で「ベリグ〜ッ」と言いながら、目の奥は笑ってなくて、外人さん同士で話してると「何話してるんだよ、今すぐ教えてくれよ〜っ」ってそういう厳しさはありましたね。

○稽古はいつ頃から？

普段のミュージカルなら1か月か2か月ですけど、今回は新演出ということもあって、秋から週二くらいで歌稽古が始まって、2月からUKスタッフが来て。今回とくに一役に三人も四人もいるので、三倍も四倍も時間がかかります。

○テナルディエはどんな役？

たとえば栄の交差点で石を投げたら、アンジョルラスやバルジャンやジャベールには当たらない。一番当たるのはテナルディエ夫妻。まっすぐな信念を持った役ではなく、一般庶民の代表。他の役がみんな死んじゃうけど、マリウスとコゼットは若いからいいとして、ジャベールなんか自分で死にますからね。宗教上の理由で天国には行けないから、最後の民衆の歌にいない演出。テナルディエは悪いをことして、どんなことをしてでも生きていく。生き残るから、民衆の歌を歌えない。役者としてはそりゃ歌いてえよ、民衆の歌。

あと他の役は独白とかで自分の気持ちを伝えるけど、ぼくの役は客席に語りかける。たとえば「菊池さん飲みに行きましょう〜♪」と歌ってから、客席に向かって「コイツのおごりだぜ♪」こういうふうに客席に語るのはテナルディエだけだと思う。

あくどい奴ですけどね、憎めない。いいやつですよ。もう遅いか(笑)

○テナルディエ以外でやってみたい役は？

ガブローシュ！(笑)絶対無理。四十年前だな。生まれ変わったらガブローシュやります。

ぼくはやっぱりテナルディエかな。（展示役者パネルを順に指さしながら）そりゃバルジャンもジャベールも、エポニーヌも、ファンティーヌの大好きな夢やぶれても歌ってみたいけど。コゼットはやらなくていいや、コイツ（マリウス）もいいや。アンジョルラスはやってみたいですけどね。初めてレミゼを見たときに、ワンデイモアで下水道からバーンと出てきたテナルディエ夫妻の印象が強くて、ぼくはこれをやりたいと思ったから。

遊びで「燃える〜♪」とか歌ってるんですけどね（物真似っぽく、「バカにしてないですよ」）。譜面揃えて全部一人で歌う。レミゼはすごく楽曲がいいので、勉強になります。

○同役のテナルディエ二人に思うところは？（客席から）

複雑ですね。全部俺にやらせろ、って気持ちもあるし、いっそ知らない人ならそれでいいんだけど、よく知ってて、二人とも慕ってくれて、同役だからなかなか会えないってマチソワ入れ替わりでわざわざ楽屋で待っててくれたり本当仲よくて。オーデの後、KENTAROからメールが来て「またよろしくお願いします」「はいはいよろしく〜」って返事して、フタ開けたらテナかよ、先に役名書いておけよ！って。マンキチも同じ。（鼻つまんで本音）俺よりうまくやるなよ！とか思っちゃう。

○どうしても昔のレミゼと比較してしまうんですが。（客席から）

それは仕方ない、ありますよ、当然。でも役者がそれを気にしていたら、前に進めない。前の役者の真似をしていたら絶対に勝てないし、自分にしかできない芝居をやるしかない。今の演出で、メンバーで、ぼくたちにできる最高のものを作る。お客様はどうぞご自由にご覧になってください。

○最後に一言。

レミゼラブルは東京公演が終わって、これから博多、大阪、10月には名古屋に来ます。ぜひ見に来てください。