さて、語りだしたらシリーズで語りたくなってしまった（笑）主従論。今回は、主従の具体的なモチーフを列挙して、きわめてミーハーに語りたいと思います。なお、紹介する作品の作者様の敬称は略させていただきました＜(_ _)＞

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まず、私の中の主従の理想を書いたものと言えば、嘉と潁【小説：落陽　拙作】でございます。自分で書いたんだから、モロ好みなのは当たり前なのですが。

超美形で超変態で鬼畜な主と、健気で無口な従者の組み合わせ。しかも、こんな取り合わせなのに肉体関係はありません。（幼少時のおいた止まりです）

何しろ主のほうが「受」性格で（笑。いや、嘉も「受」なんですよぅ、潁に対しては。惚れた弱みってやつで）、従者のほうがそれをわかっていながらも「主従」以上の感情はやんわりと無視しましたので、精神面だけ深みへ深みへ落ちていっているんですねえ。一見圧倒的な主従関係も、精神的ＳＭ関係では実は逆転が生じております。……って、ああ、連載終わってからこういうこと語るなよ。作中で語れよ……ダメダメ作家。

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さて、気を取り直しまして。私が「落陽」を書くほどに主従関係にハマった最初のきっかけは……と記憶をたどってみますと、シャールとセレム【コミックス：エイリアンストリート／成田美奈子】が思い浮かびます。（まあ、成田先生にはご迷惑なお話）

実は一国の王子であるシャールと、その影として仕えていたセレム。シャールにとっては従者という感覚はなくて、尊敬する大切なセレムなのでしょうが、セレムのほうでは「影」である自分に悩むエピソードが出てきます。この迷いが去った後、彼はシャールの友人でもあり（たまにいじめっこ）、よき補佐役でもあり、で安定するのですが、シャールがピンチになるたびに本気で心配し、王子の補佐役にふさわしい有能さでシャールを救い出す。「よかった」とシャールを抱きしめる姿には、勿論ＪＵＮＥ的な感覚はまったく別にして、きゅーんと痺れたものでした。

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と、もうひとつのルーツは、正宗と小十郎【大河ドラマ：独眼流正宗／ＮＨＫ】。そんなに真剣に見ていたわけでもないのですが、強烈だったワンシーンがひとつ。正宗を救うためとはいえ、まだ幼い主の片目を迷いなく抉り出す小十郎。これはお互いに相当の信頼がないとできない芸当です。当時愛読していた雑誌・アニパロコミックスでの高橋なのさんのパロディ漫画もあいまって、「主従」ロマンにドキドキ胸を膨らませておりました。

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さて、正宗から一気に時代物に入りましょう。やはり「主従」と言えば時代物。現代物ではそうそう「ご主人様」とか「殿」ってわけに参りませんからねえ。

既にくどくど語っている遮那王と芥子丸【映画：五条霊戦記／石井聰亙】。ここは圧倒的にの主のほうが強い関係です。（異論もあるかも。そのへんはしづむの妄想視点というところで。笑）

遮那王様ったら他者を必要としないくらいに強いし、弁慶に夢中になっちゃって芥子丸なんか見てないでしょう？という勢い。それでも健気に仕える芥子丸。うう、可愛い。……そうではなくて。でも実は、この傍若無人な遮那王様も、芥子丸のことは非常に愛していると思うのです。自分より弱いし、無口だし、すがるような瞳の従者君ですが、尽くしてくれるのはやはり可愛いというか、とりあえず見た目可愛いし……うわ、しづむ視点が入ってきた；これ以上は、どんどん煩悩にまみれてゆくので、いずれ逢魔ヶ森はご近所さんにアップされる鬼畜小説をご参照くださいまし。（逃げ）

ちなみに一般的に義経の家来と言えば弁慶ですが、不勉強な私は義経記等を呼んでいないため、いまいちこちらにはピンと来ておりません。五条霊戦記では、主従じゃなくてライバルでしたし。主を守って立ち往生にはロマンを感じますが。

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立ち往生といえば、実は私は曹操と典偉【コミックス：三国志　横山光輝】がまず思い浮かぶのでございます。（よりにもよって横山光輝って、ＪＵＮＥじゃないっす！笑）

絶世の美女・鄒氏に骨抜きになって（このへんの描写が、他のどの媒体よりも横光がロマンチックなのでございます〜。曹操様、若くて素敵）夜襲を受けてしまった曹操を逃がすため、獅子奮迅の闘い、ハリネズミのように全身に矢を受けて立ち往生。絵的には横光のいかにも「剛の者」体系なんでございますが、その後で曹操が彼の死を悼んで泣く場面でもらい泣き。

ジメジメしてなくて「殿を守るのが俺の役目！」とだけ思い込んでいて、直前には新入りに「うちの殿は頭も切れるし」なんて素直にノロケている場面もあったりして、典型的豪傑な彼と、彼が仕える若気の至りだけどカリスマたっぷりの殿との関係に、乙女は痺れたのでした。

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さて曹操といえば、有能な軍師軍団。その中で私が注目したいのは、曹操と荀イク【講談：三国志演義／羅漢中】でございます。曹操陣営、軍師は星の数ほど抱えておりますが（夭折の郭嘉とかね……うるる）、主従のロマンはやはり文若様（荀イクのあざな。漢字出ないんだもん）。曹操をして「私の子房（かの劉邦の軍師・張良様のあざな）だ」と言わしめ、若い頃の曹操を常に助けていた彼ですが、死に方が何とも……。

晩年、帝をないがしろにする曹操を諌めるため、出仕せず自宅にこもりきりになっていたところ、曹操から空の箱が届く。それを「お前はもう用なしだ」の意と受け取り、毒をあおって自殺。

……ええええええーーーー！？かなり早い時期から、ずっと第一の謀臣として曹操に仕え（遠征のときの留守役とか、重要な役は全て彼だったのです）、魏がこれほどの大国になった功績の最も大きかった彼が、どうしてこんなことに？帝をないがしろにする曹操を文若様が何故諌める？それを用なし？空の箱の真意って本当にそんなこと？……文若様贔屓には辛い、いまだに納得できていないエピソードなのです。

勿論、歴史の伝承ですから、何がどこまで真実かはわからないのですが。きっと、二人にしかわからない何かがそこにはあったはず。互いを思う、気持ちがあったはず。（いつか、自分なりの解釈を書くのが野望）何かこう「主従」の闇を垣間見る、二人なのでした。

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三国志で忘れてならないのが、孔明と裴緒【小説：私説三国志　天の華・地の風／江森備】孔明と魏延でなく、裴緒というのがマニアっぽいですね。潁の直接的なモデルは実はこの人かもしれません。あ、以下思い切りネタバレ注意です。

裴緒は、一巻からちゃんと登場している、孔明さんちの地味な家令です。他の人物たちのように見せ場はないし、孔明との絡みも勿論ありません。ずーーーっと地味な役割で、他の男とヤっている（笑）主を目撃してしまって、それでも動じないふりで家事を続けたり、たまにはずみで敵地潜入説得なんかをやらされる活躍があったりするのですが、最後の最後になって、実は孔明を殺すために組織から送り込まれてきた刺客だったことが判明します。けれど孔明に惚れこんでしまい（変な意味でなく、まさに孔明の天賦の才に惚れこんだのです）、組織を裏切って（この時点で組織に家族とかきっと殺されている）仕え続けていたというのです。

最終的には、謀反人として追われる孔明を守り、混乱のさなかに仲間内に殺されて死ぬのですが、彼は後悔どころかそんな人生に満足していて。感情を滅多に表さぬ、最終巻まではろくにセリフもない彼ですが、本当にすべてを孔明に捧げていたんだなと思うと……うるる。死んだ裴緒の代わりに孔明のＨの後始末とかする（笑）汝秀がまた涙を誘うのでした。

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さて、今度は日本の時代もの。近藤・土方と沖田【舞台：風を継ぐ者／成井豊、コミックス：風光る／渡辺多恵子】

沖田総司については悲劇の天才剣士とかにこにこ笑いながら人を斬る美形というイメージが大変強いですが、私のイメージは少し異なります。まず、美形じゃないです（笑）とっても背が低いか、色黒のヒラメ顔。武田真二は可。

そして彼の腕が立つのは、純粋に刀を操ることではなく、近藤・土方のために剣を振るっているから、というのがあります。

近藤・土方のためだけに、人を殺せる。表面的に見ればこれは結構おバカちゃんです。自分の考えなしに人を斬るんかい！という見方をすれば。しかし逆に、自分で考えればいいんかい？と問われると、それも違う気がします。

私の中の沖田総司は、たしかに心があります。人を斬るとき、その人にも大志があって家族があって命があることを、よくわかっています。なおかつ、近藤・土方が常に正しいわけではないことも、よくわかっています。人は万能ではないのですから。そういう意味では、自分で考えたことも他人が考えたことも、等しく正しくて等しく間違っている。そこで彼が信じたのは、自分の感覚や理屈でなくて、他人である近藤・土方の生き方だった、こう感じています。沖田は自分の生きる道を考えられなかったわけでは決してなく、自分の生き方・感覚を抱えたままで、透明に、尊敬する近藤・土方のために剣を振るおうと思った。これが私の沖田像です。

自分の過ちを他人のせいにするのはたやすいことですが、他人の過ちも含めてすべて負おうとする決意は、それなりに覚悟のいることと思います。何故そう思うに至ったかは、プロセスがあると思いますが……ここでは語りません。

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では、少し現代？のものを。内海と黒崎【コミックス：機動警察パトレイバー／ゆうきまさみ】から。この二人は主従じゃなくて、上司と部下ですが。知能犯で子供のような上司と、ちょっと偏執的な有能な部下。この二人でやおいをどうこうは読者オンリーでしたが（読んどったんかい！）、腹の内の読めない内海にイラついてしばしば暴走する黒崎（この人がまた、性格過激で好みなんですねー）がツボなのでした。

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そして現在マイブームとなっているのが、李と伯芳【小説：LoveSick〜僕はあなたの家来／A/T】中国黒社会のボスと、その片腕です。

黒ずくめの集団にあって一人だけ白い服を着て、主の身代わりの標的となり、それを他人に指摘されて普段笑わないやつが思い切り破顔する、偏執的な李の信望者。幼馴染なんですが、ずーっと今時珍しい「主従」な関係で、おかげさまで恋も知りません。（ちなみに主のほうはやりたい放題。笑）常に己ではなく李の考えに従い、女顔の美形で、拳法使いで、主のためなら人殺しも何とも思わない。この人も、主より後には死なないと思っているタイプ。（しづむ妄想視点）

物語はまだ完結していないので、この主従がどうなるか、ドキドキ見守っている次第でございます。（念のため。李は敵役で、主役は全然別。よって伯芳は超・脇役です）

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以下は現代ではなく、ファンタジーですね。フランとカフ【コミックス：カルバニア物語／Ｔｏｎｏ】黒髪長髪、物静かなハンサムで有能。あ、また好みそうなのが出てきた……と思いきや。設定が、潁にそっくりなのでした。

仕えている家の夫婦仲が冷え切っていて、奥様が家を出てしまった後、その子・フランを育てる羽目に。フランは素直でよい子に育つのですが、このフランの母親がカフの初恋の人だというところで……まるきり潁じゃん！と驚愕。ちなみにこのお話は泣けます。後味もさわやかですし。ああ、カフ好き。

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１でもちょろっと書きましたが。ナリスとヴァレリウス【小説：グイン・サーガ／栗本薫】……この二人の主従ＪＵＮＥは「凶星」で読めます。本編ではプラトニック描写だけでラブラブらしいです。最新巻まで読めていないので、深くは書きませんが。

さらに、見たこともないお芝居の主従。ルドルフとクリストファー【舞台：ヴァンパイア・シャッフル／中島梓】これはハルミシリーズの「この耳に響く声」のイメージソースとなった作品ですが。正真正銘、お耽美な「主従」です。正しくはアルカード伯爵と従者Ｘなのでしょうが、響きだけで既にロマンティックなのであえてファーストネームで表記。

夫婦状態のくせに呼び方が「ご主人様」で、気まぐれなご主人は機嫌の悪いときに名前を呼ぶと怒るし、平手打ちするし、そのくせ機嫌がいいとやさしくて甘いし、ダンスして絡んで悶えて、一人残されたクリストファーが伯爵のマントを抱いて切なく歌う（これが駒田はじめの脳髄蕩かす甘い声……）モノスゴイ世界。キスをせずにため息だけでキスを演じ、視線を交わすだけの芝居がエロティック……ああ、この目で見たい主従の血を吐くほどベスト１です、間違いなく。

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ここまで、さんざん男同士の主従を書いてきましたが、実はお姫様とナイトという主従が、もっと以前から好きでした。若菜とシン【コミックス：憧れアドベンチャーだったか？／あさぎり夕】とか。（あまりに古すぎてコメントできません；）

漫画を書いていた一時はお転婆姫とその侍従の物語のプロット等もありましたねえ。東洋系ファンタジーで、お転婆なお姫様が、戦乱の中をとある国へ嫁ぐために（政略結婚らしい）旅している。このお供の中に「水樹」（こいつだけキャラクター名まであった；）という若い男の侍従がいて、実はお姫様はこいつにラブラブという。……まあ、典型的な物語を考えていたのでした。形にはまったくなっていないのですが。

【ＯＡＶ、コミックス：吸血姫・美夕／垣之内成美？】でも美夕にラヴァとかいうナイト役がいたと思うのですが、ＯＡＶまではさすがに手を出せず、１冊だけ買ったコミックスは内容をよく憶えておりません。綺麗な絵が非常に好みで、これで主従関係が私好みに描けていたら大興奮の作品だったと思うのですが、ちょっとファン層が違いましたね。

そしてアムネリスとアストリアス【小説：グイン・サーガ／栗本薫】……好きなんですよ、アストリアス。アムネリスはナウシカのクシャナ的な、自ら兵を率いるお姫様なのですが、ゴーラの赤い獅子の異名をとる（笑。このへんの設定が可愛い）名門貴族の青年アストリアスが一方的に惚れこんでいる。アムネリス様と目が合うだけでドキドキ、誉められれば幸せ、なじられれば撃沈、政略結婚させられるアムネリス様をお救いするんだと思いつめて出奔したり、健気でおバカで実に愛おしいのです。歯牙にもかけないアムネリスがまた好きだったり（笑）

このあたりのつれない姫君と報われない従者という設定は、桂木探偵所所長と所員の二階堂【ゲーム：ＥＶＥシリーズ／Ｃ'Ｓウェア】でも楽しませていただいていたりします。二階堂のおバカなんかに揺れてしまう所長が可愛いのですぅ〜。

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はて、思ったより長文になってしまいました。

総括はまた次回として（まだ続くわけ？）今回は各論だけで終わりにいたします。皆様がご存知の作品は……どれくらいございましたかね？（笑）