大好きなサビタの再々演。キャスト若手二人は交替、劇場も360度客席の円形劇場ということで、幕が上がる前は正直「どうなるのかな？」と思っていました。でもいざ幕が開けば、やっぱりサビタはサビタ。もう大好き！なお芝居で、朝から当日券に並んだりしてチケットを買い足し、うっかり黒崎まで行ってしまった次第。

　以下いろいろネタバレ感想。

　まずは円形劇場の作り、これが素晴らしくサビタ向き。とにかく客席との距離が近く、最前列は舞台に足を乗せられるゼロ距離、最後列でも舞台からの距離は5メートルほど、役者とバッチリ目が合いました。客席参加型のサビタ、役者と、そして他の観客とも目が合い、盛り上がりを共有できるとより楽しめます。

　役者さんはグルグル回りながら演じるので大変そうですが、前後左右から違う角度で楽しめるお客はかなりお得です。あの角度からこのシーンを見たい、とついリピート。

　たとえばドンウクが掃除機でお尻を吸われるシーン、今回は「スポン」という効果音がついて「全部吸われた」セリフで爆笑シーンになるのですが、初日は吸われる横からの構図を楽しみ、次にお尻側から観察し、当日券では吸われる表情が見える席をＧＥＴ。前から後ろから堪能しました。

　何と言っても秀逸なのは、二人でピアノを弾くクライマックスのシーン。以前はアップライトピアノを弾く二人を斜め後ろから見ることしかできませんでしたが、今回はテーブル型の電子ピアノを使用することで役者の顔が正面から見えやすく、さらに円形舞台がゆっくり回るという演出を追加。ドンウクとドンヒョンは向かい合わせに座り、時折アイコンタクトしつつ連弾、客席からは二人の表情が交互に見えるという仕掛けです。

　曲が進むにつれて、心を通わせ、変わっていく二人の表情。心からの笑顔で楽しそうに弾くドンウクと、怒って泣いた後の放心から無心、抑えがたいアニキへの思慕を魅せるドンヒョン。このシーンはもう、この演出じゃないと物足りないだろうと思います。

　この円形舞台を手動で回したり、役者が着替える場面で筒状カーテンを持ったりする黒子として、今回は「観葉植物くん」三人の役が追加されていました。緑色の葉っぱ柄の、顔の前に薄布を垂らした黒子装束、アイビーとオリーブ、ガジュマル。セリフはありませんが、ドンウクの感情に共感してしんなりしたり、怯えたり、踊ったり。途中ドンヒョンが「もう行くよ」と去ろうとした瞬間、観葉植物くんたちがピアノの陰からじっと見つめ、目線で引き止める演出も印象的でした。

　テディベアのユンシンちゃんだけでなく、観葉植物くんたちも普段から一人暮らしのドンウクの話し相手なんでしょう。ドンウクの孤独をよりリアルに感じさせる存在でもありました。

　しかして中身は「ぶっ飛び系」で、前任者の「一生懸命だけどドジな女の子」とは全然違う「世間とズレているがゆえにいろいろやっちまう」まさに兄弟の間に投下される爆弾的なキャラになっていました。

　ドロワーズに関しても「探し物をするためにダンボール箱に頭から突っ込み足をバタバタする」場面があったからよく見えたわけで……オカシイです、この娘（笑）勢いあまって反対側に倒れそうになり、駒田さんが助けに行ったりしたこともありました。

　物投げもちょいちょい失敗するので、駒田さんが拾ってフォローしたり、そんなアドリブがたくさん見られる臨場感も、遥ちゃんが勢いよくぶっ飛んでくれたおかげです。

　性格もドＳ系で、今回同じくＳ丸出しだったドンウクとのシーンのドＳ対決がまた凄かったですね。「ホントそんなカンジですよね」「もっとずっと若い人ですよ」「その顔で？」思ったことをズバズバ口にするミリに対抗するように、大人ながら負けず嫌いな面を覗かせるドンウクが面白い。ドンヒョンにはひたすら甘いお兄ちゃんなので、ドンウクのこういう側面が見られたのは、相手役が遥ちゃんだったということも大きかったかな、と思います。

　ドンウクが口ずさむドンヒョンのオリジナル曲に合わせてミリが超絶変な動き（ダンス？）をし、ドンウクが一言突っ込むシーンは日替わりの見所でした。「いい病院紹介しようか？」「親御さん、心配するよ」「無理しなくていいんだよ？」「それ、意味がわからない」かなり素の駒田さんに近い、的確な突っ込みのドンウクが見られて面白かったです。個人的なお気に入りは、ミリがビョンビョン異常に飛び跳ねたときの「一つ聞いていい？　どこにゼンマイついてるの？」ですかね。ものすごく駒田さんらしい一言。

　あと客席にいる遥ちゃんファンは、いわゆる大きいお兄さんたちですが、ノリノリに盛り上がってくれて楽しかったです。駒田さんのギャグにも新鮮なくらいイイ反応。青山後半では、冒頭登場したドンウクにリピーターがイェーと手を振り、イェーと応えてから「誰？」ノリ突っ込みが見られたり。

　大ホールで集客淋しいかな？と思われた黒崎の大千秋楽も半数以上が男性客、東宝ミュージカルで男女比が常に半々以上というのは初めて見たかもしれません。一人観劇だった私も周囲の盛り上がりにつられて、テンション上がりまくり、カテコ後の客席降りハイタッチでも「はるちゃん！」とアピールする彼らに紛れて駒田さんにしっかりアピール（ただし目線のみ）しましたとも。

　前任者はアニキへの反発や照れも見える弟でしたが、ヒデくんはアニキラブ全開で、こりゃ二人でいたらアニキだけでなく自分も甘えてダメになると、ブラコンをこじらせて家を出たクチだなーというベッタリ兄弟。再会直後も照れなく好き好き表現、兄弟喧嘩ナンバー「アニキはアニキ」もひとさし指でつついて笑いあうイチャイチャナンバーになってましたね。

　特筆したいのは「サラン」でアニキに後ろから抱き寄せられ、髪に頬擦りされたときの表情変化。気配と感触で「アニキだ」と気づき、思慕と信頼と愛情に全身をゆだねる、ものすごく無防備な、何とも色っぽい表情を魅せるのです。回り舞台なので見える角度が限られますがね、この一瞬でヒデくん全力肯定！

　甘えたな末っ子ドンヒョンと、過保護なドンウクは何というか姉妹っぽい兄弟でした。「『私たちは』って言わないでよ！」「『私たちは』って言わないでよって、言わないでよ！」女言葉の掛け合いが可愛かったり、慌てて着替えようとしたドンヒョンが裸で「早く着せろ！」と足踏みして「子供か、お前は。ほらバンザイしろ」とアニキが服を着せるシーンとか、両親が健在な頃からアニキが末っ子の面倒をみていたことが伺えます。

　ドンヒョンにサンドレス着せて、着替え中のカーテン下ろして覗くとか、アニキの部屋に干してあるＴバックをうれしそうに眺めるドンヒョンとかも（アニキがはいてると思ってニヤついてたんか？）、兄弟というより姉妹、それもエロゲの百合姉妹のにおいがしました。

　腐って18禁な言い方をすれば、（以下反転）私の中でドンヒョンの受攻が逆転したよ！　でもアニキも受なのでただの百合だよ！　育ちゃんドンヒョンでは「外国の港で娼婦を抱いた後、星空を見上げてアニキのことを想う」妄想（サイテー）をしたものですが、ヒデくんドンヒョンでは「船上で他の水夫に抱かれながらアニキアニキってすすり泣く」妄想（やっぱりサイテー）が止まりませんでした。ツッパって後ろからしかヤらせてくれないのに、アニキがするみたいに頭を抱き寄せて頬擦りすると感じまくって泣き出すという。（どんだけサイテー）

　ちなみに百合姉妹なので、アニキとはいたしません。一つ布団で抱き合ってふわふわ幸せに眠るよ、サランのあの表情でね！（反転ここまで）

　舞台のその後を妄想するとき、育ドンヒョンはやっぱりまた家を出て、時々アニキに会いに来る、そんなイメージでしたが、ヒデドンヒョンはそのまま居ついて「これからはオレがアニキを養う」と陸での仕事を探して二人暮ししそうなイメージです。ドンウクの「願いはもう叶えられました」のセリフの意味が、微妙に違って響くというか……育ドンヒョンとは心が通じ合ったけど、ヒデドンヒョンは身も心もアニキの元に帰って来たよね、というか。

　あとはまあ、青山劇場での「乱入するミリに驚いて客席に避難する」演出で、ヒデくんに膝の上に乗られてしまった弱みというのもあります。女の子を乗せてるみたいに軽くて柔らかくて、サンドレスで丸出しの肩も背中もツルッツルで、若いエキスにヤられましたのこと。

　初演から三回目のドンウク、印象はそれぞれ違います。初演は「厳格なお父さん寄りのお兄さん」、再演は「世話焼きなお母さんよりのお兄さん」、今回は「スキンシップ過多のお姉さん寄りのお兄さん」に見えました。

　お姉さんってナニ（笑）な言い方ですが、お色気系コメディ漫画にありがちな、魅力いっぱいサービスいっぱい、家族愛を超えかけた弟の存在がお約束の、お姉さんポジションに感じたわけですよ。もちろん駒田ファンの色眼鏡はわかってますが。

　さらにこのドンウクお姉さん、意外と負けず嫌いだったり、Ｓだったりの一面も魅せてくれて、今回がいちばん素の駒田さんに近かったんじゃないかな〜と。ドンヒョンや身内にはベッタベタに甘く、ミリとは妙に張り合い、客席には基本ドＳ。相手役二人のキャラとバランスを取った結果、大変に私好みのキャラになった気がします。

　キャラ作りが好みになったからか、単に三回目だからか、以前までとは違う見え方をするシーンもしばしば。

　たとえば「乾いている服がないから」とドンヒョンにサンドレスを着せるドンウクですが、今回「わざとだろ？」疑惑が自分の中ではっきりと。自分の服は洗濯中としても、毎日ピアノを磨くお兄ちゃんが失踪中の弟の服を全部処分しているはずがない。姉を持つ弟というのは幼少時に姉のスカートをはかされた経験があるはずで（by弟を持つ姉）、ドンウクは「女物着せてもドンヒョンは可愛いな」が記憶にあって、わざとやったんじゃないか？と。

　兄「大丈夫じゃない」弟「大丈夫だ」と逆のことを返す弟に兄「大丈夫だ」弟「大丈夫じゃない」と言わせて、兄「イェー♪」とか、年齢を聞かれて「22歳！」、「ロウソクかと思ったらクレヨンじゃねえかよ」とボケる弟に「バカでしょ？」の冷静なツッコミも今回のドンウクならではの反応。ミリとの「私も結ばれたーいvv」「無理！」、「意外と負けず嫌いなんですね」「はい」、「触らないで余計散らかるから！」、「思ったことがすぐ口に出ちゃって」「それがダメ！」反応の速さ、受け流すのではなくやり返すところが、生真面目なだけではない今回のドンウクの魅力でもありました。

　それとテディベアのユンシンちゃんが、今回はすっかりドンウクの分身になってましたね。ドンウクとお揃いのエプロンと三角巾姿、ことあるごとにユンシンに額をくっつけて語りかける姿に、あーぬいぐるみしか話し相手がいないんだなあという一人暮らしの淋しさをしみじみ感じました。何せ私もぬいぐるみに話しかけるのでよくわかります。

　ヒデドンヒョンも「ユンシン」のことを可愛がっていて、ナチュラルに話しかけたりするあたりがまた百合姉妹っぽい。次があったら、マスコットサイズのユンシンちゃんを、グッズにして販売希望です。　

　シリアスなシーンでは、冒頭のドンウクのソロ「幸せな君を想うよ」の部分、前回までは家族メインで聞いていたところ、今回は何故か元恋人のソナ先生（前までの役名はチョ先生でしたが）のことだと思いました。しかも、前回までは「ソナ先生と別れたけれども、決定的に壊れてはいない、もしかしたらまだ望みはある」印象だったのが、「ドンウクと別れたソナ先生は、今は他の人と結婚して幸せに暮らしている」と確信してしまった今回でした。このへんの感じ方の違いは、むしろ私が年齢を重ねたことによる心情変化かもしれませんが。すると後のパーティーソロの「あきらめず幸せを」と明るく歌う部分が、また違って胸に響く。

　後のシーンで、素直に感じたままに嗚咽を漏らすドンヒョンに「すまん」と詫び、「これからどうしよう？」と途方にくれる弟に「メシ食おう」と答える兄の姿からは、ドンウクの強さ、やさしさを、ひときわ感じました。

　それだけに、ピアノを弾けずにドンウクがすすり泣くシーンは、本当にどうしようもなく、辛くて切ない。

　その兄を、ドンヒョンのピアノが勇気づけます。もうかつてのようには動かせなくなった指で演奏しながら、気持ちを通わせ、笑顔を取り戻して行く二人……回り舞台で二人の表情が見えるようになった演出とあいまって、手に取るように二人の心情変化がわかり、深く共感できました。素直で甘えん坊の弟と、強くやさしい兄の見えない心の交流が、すんなりと胸に落ちた今回。

　さて今回のドンウクは、客席にもドＳだったわけですが。一番手荒いのはドジョウ鍋の「髪グシャグシャ」演出。私、今回はじめて餌食になりました。私の観劇初日で、Ａブロック最前列端の弄りやすい座席。今回の演出がどうなっているかを知らないまま、うっかり髪飾りなんかつけて観劇し、ドジョウ鍋ナンバーに突入。やけに視線が来るな？と思っていたら、手を取って立たされ、360度他のお客さんに見られながら、髪飾りがふっ飛ぶほど髪をグッシャグシャにされました。何ですかこの公開ＳＭプレイはっ！？　内心パニックしながら大喜び。カーテンコールでは「ご迷惑をおかけしたので」と鏡とヘアブラシのセットをいただき、握手しました。何という幸運！　楽しすぎるぜ、サビタ！

　ドジョウ鍋に限らず、客席と異常に距離の近い円形劇場は、かなり客席を弄りやすかったようです。雨音のうちわを渡しておいて、後から取り上げたりのドＳぶりや、今回演出の「パーティー客として舞台に上がる」やり取りも「あなたまた来ましたね！」なんてのが見られました。カーテンコールでのジャンケン大会の仕切りがまたドＳに煽る煽る。勝った人には「今年の運、全部使い果たしましたねー」女性客相手だとこういうノリは珍しいので、ノリノリに盛り上がってくれた遥ちゃんファンのお兄さんたちに感謝です。

　そしてサビタのお約束「特別カーテンコール」観客のバースデーをサプライズで祝ったりするアレ。今回応募したところ、採用されました。黒崎公演でしたので、もしかしたら他に応募がなかったのかもしれませんが。

　応募をしたのが、公演の一週間前。何せ、遠征観劇を決めたのがわずか十日前でしたからね。駒田さんファンの仲間内で、某Ｎちゃんにエールを送りたいよね、なんて話していたのをＦＡＸ。東宝さんから連絡があったのが観劇二日前。パニックして仲間内にアドバイスをもらいつつ、夕方に電話で打ち合わせして、その夜に舞台上で読む手紙を書き、メールでチェック依頼、受信確認が前日夕方、翌朝に飛行機移動して、最終ＯＫの電話を受けたのは開演十五分前と、いろんな意味でギリギリでした。

　舞台に上げられるときは「12年来の駒田さんのファン」という形容詞をつけられて恐縮。だって本人の芸暦は32年、コアな駒田さんファンは1995年からの17年世代が中心なので、12年って珍しくもないんです。ちなみにカテコは昼の部でしたが、夜の部でドンウクのピアノローンがいつもの10年から12年に延びていたのは、この紹介の影響？

　お祝い事ではありませんでしたが、お友達も喜んでくれて、舞台上でキャストさんと記念撮影、お土産に韓国のりをいただいて客席に戻りました。駒田さんに「今度飲みに行きましょう」と言われましたが、それって恒例のＦＣ親睦会のことデスヨネ、行きますけど！

　と、私たちが客席に戻った後が大変。「彼女のためにサランを歌って欲しい」という私のリクエストに「かしこまりました」と引き受けたキャストさんたち。長い曲なので、サビ手前からのイントロが流れ、曲は一気に盛り上がり……アレ、今違う歌詞と音が聞こえたような？　珍しく駒田さんが間違えた模様。一番声が通るからそりゃ目立ちます。手を振って止めて「ゴメンナサイ、もう一回」「さっきクラッカー耳のそばで鳴らされたから耳鳴りが」笑いを取りつつ、音響さん待ち。再びイントロのはずが、アレ、歌わずに終わっちゃうよ？「演出家が慌てております」駒田さんの解説に客席後方を見ると、演出の中島先生が本当に慌てながら「頭から行くよ！」何と一曲まるまるのＧＯが出ちゃいました。普段なら舞台の上で演技しながら歌う「サラン」を、キャストさん三人とも客席を向いたままコンサートスタイルで一曲まるごとのラッキー！　いやキャストさんには不運だったかもしれませんが。駒田さんは「きっと忘れないだろう」の歌いだしの後「絶対忘れない」って呟いていましたし（笑）黒崎ひびしん大ホールは小型の円形劇場より音響が良く、奥行きのあるホール全体に歌声がビンビン響いて気持ちいい。曲の最後にはＮちゃんを指差してパワー注入。サビタのサラン（愛）が伝わったかな？