演劇集団キャラメルボックス「クローズ・ユア・アイズ」 書こう書こうと思っていて、ようやく書きます。日が経っているので、ぼんやりした描写になってしまうことは確実ですが、それでもネタバレは間違いないので、まだご覧になっていない方はご注意くださいませ。 --------------------------------------- ……というか、しづむはキャラメルボックスのファンであると同時に、役者・菅野良一の熱烈？ファンですので（このへんの詳細はかなり昔に書いてます）、菅野さんに偏った内容しか書きませんが。 １．衣装と身長：軽いネタバレ やっぱりここから入るわけ？だってまあ、ネタバレは少しでも下のほうに追いやっておかないとね(^^; 今回の衣装は可愛かったですー！襟の高い、ちょっとガクランor軍服入ったクリームホワイトの上下。どうしてこうも、私の趣味にストライクかな！ 天使と聞いて妙な予想をしていたのですが、「羽根の生えた裸の子供」じゃなくて良かったです、ほんと。羽根なんかなくて、町にいそうな、けれど白づくめでどこか高貴で浮世離れした姿。衣装さんのセンスに感服。 相変わらず背は低いし足は短いし（大変失礼）なんですけど、上下揃いだとコンパクトさが何とも言えず愛くるしい（愛らしさのあまり、呼吸困難起こして苦しいの意味？笑）です。よく動くので、体のラインが浮かび上がってまた可愛い。机に突っ込んで足をバタバタさせているときのお尻とか。（お前は変態オヤジか！）最前列の右寄り＝菅野さんのほぼ定位置目の前でしたので、セリフのないときもじっと眺めさせていただきました(^^) そして今回もギャグネタとして多用されていた「身長」。１５４センチの私が並んだときに「目の高さがほとんど変わらない」と感じましたからね、かなり低いかと思われますが。低いからいいんだよなー（笑） 部下のシリウスと日誌を取り合って、向かい合って一緒にジャンプ等は見た目にも微笑ましいネタでした。 ２．滑舌と動きと表情：ネタバレありー 実は……心配してました。プロデューサーさんはＷＥＢ日記で「菅野のセリフは１／３は聞き取れません」なんて書いてるし、全国販売の「シアターガイド」で役者頭の西川さんまで「菅野良一の滑舌は大丈夫なのかっ？」なんて書いてらっしゃったので。（いじめられ役なんですね、基本的キャラが。ゲスト紹介で、ゲストでもないのに「日本野鳥の会から菅野良一！」なんて紹介されて「何で！？」ってやってましたし） でも大丈夫でした。→役者さんなんだから当たり前ですが。思うに、声質が舌足らず系なんですね。温かくて、幼く聞こえるくらいのひたむきさが声に現れて。（この人の声にも間違いなく魔力入ってます。あと眼差しにも） で、動き。……ハテ、この人はこんなに舞台上で動く人だったろうか？と思いました。この人を見た最初が沖田総司でしたので、殺陣の直線的な激しい動きばかりが記憶にあったのですが、軽やかで（体型は沖田の頃より少々太いんですけど；）妙に目を引くリズミカルな動き。クチーナ・ミラノでキャラメルボックスとは異なる役どころを演じていたときにも、すごい運動量と思ってはいましたが、今回は大きな運動がないのにクルクルよく動くなーと思いました。（単にずっと目で追っていたから？） そして表情。やはり沖田の笑顔が印象的なのですが、今回はいつもニコニコしているのではなく、魂を取りに来る天使だけあって、厳粛な顔つきやむしろ怒っていたほうが多かったと思います。それが、ラスト。感動の再会の母子の後ろで、決まり悪いような照れくさいような、とてもうれしそうな笑顔が印象的でした。 いかにも涙を狙ったとも見えるラストシーン、おばあちゃんの枕もとで「東京へ行け」と何百回も繰り返すやりすぎにも見える天使の豹変振りですが、菅野さん独特の、ひたむきで温かい雰囲気が、すべて納得させてくれました。 やっぱこの人は好きだわー。とつくづく思いましたのこと。 ３．ストーリー：さて完全ネタバレというか、あらすじと私なりの解釈です。 「クローズ・ユア・アイズ」のタイトルは、天使のセリフからでした。人が死んだときに、その目を閉じさせて魂を抜くときに、天使が発する言葉なのです。 物語は大正日本、一人の男が、死んだにも関わらず、瞳を閉じずに生き続けてしまう……そこから始まります。 話としては大きな一本の話があるというよりも、オムニバス形式で、様々な人の生死……生きて傍にいるということ、死んで明日離れ離れになるということを、描いていたように思います。こういうテーマ、最近妙に弱いんですよね。 そして人間たちの生死の狭間の喜怒哀楽を、穏やかに冷ややかに見つめているのが天使です。愛している人に別れも告げらず死なねばならなかった人間の瞳を「クローズ・ユア・アイズ」の一言で閉じさせる。それは彼らの使命であり、そのまま自然の摂理です。現実に、生きていれば必ず誰かと関わりがあり、死はそのどんな関わりにも決して構ってはくれませんからね。 菅野さんは、この天使の役でした。海外滞在中、震災で生死不明になった恋人を探すために、無理をして働いて旅費をため、それなのに過労が元で明日日本へ着くという船の中で死んでしまった青年、武三。彼を迎えにきた天使、プロキオンは、死んだはずなのに瞳を閉じない武三に「クローズ・ユア・アイズ！」と高圧的に言い放ちます。けれど武三は目を閉じない。恋人を探すまではいやだ、と言い張ります。 ところが武三は、恋人の死がわかった後でも、親友の仁太郎の悩みやその家族等にかかずらっていっこうに死を受け入れない。プロキオンは呆れたり憤慨したりしながら、彼に瞳を閉じるよう説得し続けます。 そしてラスト、武三の既に死せる肉体はとうとう限界を迎える。（劇中、死斑が出たりどんどん腐っていくというリアル？な設定でした）貴重な時間を仁太郎や他人のために使い、田舎までの旅費さえも他人にあげてしまった武三は、田舎の母親に別れを告げられぬまま、ついにその瞳を閉じます。……と、まさにその瞬間、武三の母親が駆けつけるのです！ 驚く武三に「昨夜見知らぬ男の人が枕もとに立って、東京へ行け、武三に会え、と言ったから」「でもそれだけで？」「だって、朝までずうっと、何百回も何千回もなのよ」母子の後ろで笑っているプロキオン。……プロキオンの仕業です。 死ぬということに実感のない天使が、冒頭では高圧的に「クローズ・ユア・アイズ」と言い放っていた天使が、まさかそんなことを！ それまで「画家になるために家は捨ててきたから、会わないままでもいい」とつっぱっていた武三も、母親にすがり、詫びながら泣き崩れる。このシーンの武三のセリフは、嗚咽ばかりでほとんど聞き取れません。 そしてプロキオンは、自分が仕える神への報告（人の死を人に告げてはならない規則違反の始末書？）の中でこう結びます。「これは、あなたが起こした奇蹟ではないでしょうか」 人が生きている以上、いろんな人といろいろなつながりがあります。家族、友人、恋人、ただの知り合い。どんなにつながりが薄いと思っていてもそこに関係はありますし、どんなに深い関係でも、明日死んでしまえば何も言わずに離れ離れになってしまう。「一人につき一人の天使。震災前夜にはたくさんの天使が東京にいたのですよ」のセリフにはぞっとしてしまいました。突然の死を見取るために、もしかしたら私の傍にも天使が静かに寄り添っているのかもしれない。同時に、何か崇高なものも感じたり。 そう考えると、いまこの瞬間に生きて好きな人の傍にいられるということ、それは大変な奇蹟です。 これは飽くまで私個人の解釈ですが、こういうところこそが私がキャラメルボックスを愛するゆえんです。 「どぶ底に這いつくばってでも生きようとする」泥臭くてもみっともなくても、生きるということに一生懸命で、間違っても「私が死んで皆が幸せになるならそれでいい」なんて言わない。誰が死んでも悲しむ人はいる。生きていることの奇蹟を噛み締めながら、一生懸命に生きる人々が好きなのです。 （だから……某ゲームの真弥子ちゃんは実は嫌いなタイプ。彼女に幸せになって欲しいのは彼女が好きだからではなく、彼女が不幸なままだとそれを一生背負って生きなければならないまりなさんが辛いと思うからなのです。 「私が死んでも代わりはいるもの」なんて言っちゃうレイちゃんもいかん。自分の存在意義を危ぶむのであれば、やはり「お願い私を見て！」アスカにならなくちゃ。 「どうせ永くはないし」冷めた沖田総司も大却下。不治の病だからこそ、好きな人の傍で生きる奇蹟を自覚している沖田が好きです） 以上、殴り語りを終わります。ビデオが出たら買っちゃうだろうな……プロキオンは沖田以来のキャラメルボックスのはまりキャラです。ブラックフラッグとか、四月になればとか、好きな物語はたくさんあるんですが、キャラにハマるのはそう多くなかったりして。 やっぱ天使でしょ。 |
クリスマスここで使っちゃった……ＴＴ