すっかり定番となっているMHKライブ。今回は再演ではなく、新作でした。珍しく？真面目でいいお話でした。以下、ネタバレ注意。

　畠中さんが主人公のピアニスト役。ゲストの浦壁多恵さんがその妻役で、子役ゲストの重松俊吾くんは子供役。プライドが高く、大きな仕事以外は引き受けず、結局稼ぎのないピアニスト。妻のパート代だけでは生活は苦しいと訴えても怒るだけ。そこへ預言者役の宮川さんが現れ「あなた死にますよ」と宣託。回避するための試練（片手の指を切り落とす）を与えるも、実行できず。宮川さんは別の預言者役・駒田さんを紹介。新たな試練（妻と離婚し二度と会わない）も、主人公は実行できず。最後に主人公が「死んでもできない」と嘯いていた「ピアニスト働くこと」を試練とし、アルバイトを見つけてくる。主人公は妻子の大切さを思い知り、実は長年喧嘩別れをしていた預言者二人も、この件をきっかけに友情を取り戻すハッピーエンド。

　これだけの文章にできてしまうシンプルな物語。それをどう魅せるかが役者の力量。そして音楽の力。宮川さんの作曲はとてもシンプルですが、飾らない分、ストレートにズドンと響きます。脚本も同じ持ち味。

　山王オーディウムは、木製タイル？に囲まれた小さな空間で、マイクなしの生声で、ホールの反響だけでやります。歌唱力がそのまんま出ます。これまた、ストレートにズドンと響く。ホールに共鳴して全身に生の歌声が響く、ものすごく贅沢な空間。本当に実力のあるメンツだから成立します。歌声だけで、ガチで涙出ます。

　トークによると、照明セッティングも駒田さんが「自分でやった」そうで、贅沢というか恐れ多い空間だな！　衣装も手作り、小道具も自分たちで。役者さんは何もないところにいろんなものを魅せるんですね、魔法のように。

　昼の部と夜の部がありましたが、二回とも見られました！（同僚にお願いしてお仕事を免除してもらった……）昼の部は、子役ちゃんがソロ歌で泣き出してしまって大変。帝国劇場でタムを演じる子役さんでも、緊張することってあるんですね。

　預言者二人の珍妙な衣装は、出オチ的な意味で昼のが破壊力ありましたかね？(笑)宮川さんが金色の布を神様風に巻いて、駒田さんは緑の布を魔術師風に。親子三人が真面目なので、預言者二人がこのお芝居のコメディ担当です。駒田さんは何故かペロペロキャンディを持ち歩き、ワンカップ日本酒に漬けながらペロペロやるという謎の演出付。畠中さんが「気持ち悪いよ！」と突っ込んでいて、いや本当その通り。客席の心の声をストレートにズドンと言葉にしてくれました(笑)落ち着いて寛大な宮川さん預言者と、ガラが悪くて情にもろい駒田さん預言者、凸凹コンビの友情が可愛いです。二人が仲直りする場面、正面から見つめ合うのですが、素の本人たちが照れる気配に客席はウフフ。

　後半はライブパートで、MHKお馴染みのナンバーを次々と。BELIEVE、俺たちの未来、しあわせの唄……など等、至福です。MHKでの駒田さんは、とにかくのびのびやっていらっしゃる姿が素敵です。お馴染みの大好きな仲間と、無理せず遠慮せず、ゼロから心の赴くまま作品を作り上げる。それをこんな至近距離で見られるって……いやあ、ほんとうにびっくりするくらい贅沢です。

　またのライブ、楽しみにしています！