本当は、3月末で終わりになるはずだった私の「レ・ミゼラブル」観劇。どういうわけだか、5月も半ばまで観てしまいました。

　観劇回数は、3月に9回。贔屓役者の駒田さんが3月のみの出演でしたので、3ヶ月分を観倒してやると通いました。が、何故かその後も4月に3回、5月に4回。真正レミオタの姉に引きずられてついつい回数が増えました。チケットの増殖って本当に怖い……と思った今回です。

　それでは、簡単にレポを。（のはずが、書き出したら止まらなくなってエライ分量です、今回も）

1．テナルディエ

　何と言っても、まずは駒田さんのテナルディエでしょう。2003年公演からハマリ役、申し分なし、と思っていましたが、今回ますますの安定ぶり。歌よし、芝居よし、役作りよしで、最高のテナルディエでした。

　大枠は変わりなしでしたが、今期バージョンもいくつか。たとえばリトルコゼットの逆さ抱き上げ。バルジャンとの取引の際、コゼットを可愛がっていたという嘘のためにコゼットを抱き上げますが、このときの抱き上げ方が逆。コゼットの頭のほうが下になっていて、いかにもテナルディエが抱き慣れていないというのが丸わかりです。ただこれ、演じている側は駒田さんも子役ちゃんも大変だろうなあ、と思いました。乱暴に見せても、実際には丁寧に扱っていますし、子役ちゃんはしっかり信用して体を預けている。お互いプロだからできる芝居なんですね。

　そして今回、回数を観た私が新たに発見したのは、他のテナルディエとの比較。3月は駒田さんオンリーでしたが、4月5月と他の役者さんを観て「あっ、これは共通の演出じゃなくて、駒田さんのオリジナルだったのか！」と驚くシーンが多々ありました。

　挙げてみると非常に細かいのですが、宿屋でソーセージを作るときにツバを入れたり、女性客と踊りながら移動してそのパートナーを旅人に譲ったり「なじみにゃサービス」が男客の抱擁だったり←冷静に考えてオヤジの抱擁がサービスとして成り立つってすげえです。私もサービスされたいですが（笑）襲撃で上着で顔を隠してオケに合わせてタタタと横切ってみたり、結婚式で銀のお皿を鏡代わりにして髪を整えてから内ポケにポイとか、きちんと計算された一連の流れで、実にうるさくなく心地よく目に映っていたことに気がつきました。このへんは駒田テナルディエばかり観すぎていた影響が大きいとは思いますが。＆私がテナルディエに求める最優先事項は歌唱力と確信。他キャストではコング桑田さんが聞かせる歌唱力で好きでした。

　あとは下水道での迫力。他のシーンではずるかったり滑稽だったりするテナルディエが、ほんの一瞬だけ見せる恐ろしさ。これはもう役の解釈なのだと思いますが、駒田テナルディエの底なしに暗い、恐ろしい眼差しには、レ・ミゼラブルの世界の深さをつくづくと感じます。単純にいい人悪い人では片づけられない、赦す神の慈愛を信じたバルジャンがいて、法を貫くことが神の御心と信じたジャベールがいて、神は死んでらあと言い放つテナルディエがいる。舞台の上の世界は、紛れもなく自分につながっているのだと思えました。えー、詳細は落選懸賞論文参照のこと（笑）＝＞懸賞論文（別窓・かなりこっ恥ずかしい系注意）

　とにもかくにも、見比べてみてなおかつ私にとっては駒田さんのテナルディエがベストでした。何が何でもまた観たい！の気持ちでいっぱいです。……いや、また観たいというか、自分の中では駒田テナルディエがデフォルトになっちゃっているので、レミゼの舞台に駒田テナルディエがいない状態のほうが不思議かも。もはや駒田さんとは別の、駒田テナルディエという存在になっちゃってます。

　ところで、他の方より早めの3月で出演の終わった駒田さん、3月31日ソワレのカーテンコールは一人卒業式状態で、ファンにとっても胸いっぱいになるものでした。まず、奥様役の森公美子さんが号泣。大楽でもないし、駒田さんのテナルディエはいつかまた帰ってくる（はず）のに、泣けちゃって大変だったみたいです。こういうときにはいつも司会役をされるのに、それどころじゃないって感じ。

　30日にはジャベール役の岡さんが駒田さんをおんぶしてくれたらしいですが、31日はバルジャン役の別所さんがファンティーヌやリトルコゼットをスルーして、いきなりテナルディエの駒田さんをお姫様抱っこ。駒田さん、だっこされた状態ではにかみ笑いをしながら手を振って可愛かったvv　その他、テナルディエ一味による騎馬戦登場もあり。ああ、こんなにもキャストの皆さんに愛されてるんだなあ〜、としみじみ感じて、ファンもそれはそれは幸せでした。

　さらに何回目かのカーテンコールで「あれ、駒田さんが出てこない？」と思いきや、下水道のフタをぱかっと開けて下から登場！　センター寄りサブセンの2列目という席にいた私は、ほぼ目の前にいきなり悪戯笑顔全開の駒田さん登場で、驚きと喜びの悲鳴を上げてしまいました。本人、最初から計画していたそうです。全力で走ってきたらしく、ぜいぜいしてました（笑）

　駒田さんのテナルディエ、本当にハマり役だと思います。もちろん、どんな役でもぴったりハマってこなしてしまう凄い役者さんなのですが、今回は本人の力量にとどまらず、カンパニーの中での存在感、その時代のファンが役にかける期待、そういう外側の部分まで含めてハマり役だなあ、と感じています。次回、次回駒田さんのテナルディエを観られるのはいつ？　期待をかけて、待ちわびます。

2．バルジャン

　2003年公演では別所さんのバルジャンが一番好きでしたが、今回は僅差で今井さんのバルジャンがマイベストになりました。別所さんのバルジャン像、今期はかなり手探りしたようで、とくに私が回数を観た3月には、役柄にどこか迷いを感じました。体温の感じられる人間性豊かなバルジャンという路線では同じなのですが、＋アルファを探そうとしていたというか。そのせいか、2003年に私が好きだった芝居のいくつかがなくなってしまっていてちょっと残念。

　で、その削れた部分の芝居をどういうわけだか今井さんが引き継いでいたりして。今期今井バルジャンで私が好きだったポイントは、コゼットとの関係性でした。もう、娘激ラブのお父さん。とくに河野コゼットとの相性は抜群で、愛し愛される父と娘でした。

　牢獄で他人を憎んで生きてきたバルジャンにとって、初めての愛する対象がコゼット。テナルディエ宿屋でこき使われ感情を殺して生きてきた小さなコゼットにとって、初めて自分を愛してくれ、信頼できた対象がバルジャン。このあたりの関係性だけで、私は泣けてくる。

　リトルコゼットとのシーンで印象深いのが「お城が待っているよ」で抱き上げてクルクル回るところ。いつも素敵なシーンだなーと微笑ましく観ているのですが、今期の今井バルジャンは何故かここでぶわっと涙がこみ上げました。より感動的な「コゼット私の子だ」ではなくて何故か「お城が待っているよ」のところ。しかも、今期の私はレミゼ不感症（苦笑）だったようで、恵みの雨やエピローグでさえ涙の出番がなかったのに、本当に今井バルジャンのここの一カ所だけ。何がそんなに涙腺に訴えたのか、未だに自分でも不思議です。

　それと細かいのですが、この直後コゼットを抱き上げてから、10年後のベガーズを振り向き一睨みしてはけるところ、大好きなんです。本来、時空がズレているので、ベガーズを睨むのは妙かもしれないですが、その10年の間、バルジャンがどんなに力強くコゼットを守って育てたかを象徴するようで、ぐっと来る。2003年は別所さんの演技が印象に残っていたのですが、今期は何故か振り向きはなし。かわりに今井さんが毎回振り返ってくれて、これよこれと思ったのでした。

　あとはもう、歌唱力、演技の丁寧さ、ルックスイメージどれをとっても安定して、観客の求めるバルジャン像に真正面から応えてくれるバルジャンでした。

3．ファンティーヌ

　断然、今期はマルシアさんが好き！　とにかくはかなく、悲惨な目にあっても他人や神を信じる姿は少女のようで、コゼットを想う姿は聖母のよう。レミコンの途中から変わったと思われる、この役作りが大好きです。レミコン当時は岩崎さんの影響かな？とも思っていたのですが、どうやらはかない役作りはマルシアさんだけみたいです。（スペシャルバージョンは観ていないので、人づてで岩崎ファンテの印象を聞いただけですが）次回も絶対、この方で観たいです。

４．ジャベール

　今期はトリプルキャストでしたが、それぞれの色を出して見せてくれました。レミコンを経て男らしさの増した今さん、繊細で華やかな岡さん、やや歌に癖がありながら気高い鈴木さん。

　特筆すべきは、岡ジャベールの警棒使い。すんません、また腐女子的な感想です。怒らない人だけ反転→対決の「ウソをつけ、お前みたいな奴！」のところで、バルジャンの胸に警棒でぐりぐりのの字書き。えっと、ソレ、警棒の正しい用法と違う気が……ともすると指で彼氏の胸にいじいじする乙女に見えてしまって、危うく吹き出しそうになったことが何度か。しかも後半にはこの仕草、男臭いくらい男らしい今ジャベにも伝染していて、うーむと思いましたです。←反転ここまで。

5．マリウス＆コゼット

　私はおそらく、レミゼにおける主要キャストがおそらく一般人とズレています。バルジャン：オーソドックスな役作りならＯＫ。ジャベール：それほどこだわらず。アンジョルラス：見た目重視で。エポニーヌ：割とどーでもいい。ファンティーヌ：実はかなり重要。テナマリコゼ：最重要！という順位で。テナはまあ、一人固有の役者固定ということが推察いただけると思いますが（笑）、物語に共感する上で、覗き穴としてマリウス＆コゼットは最重要。私にとってのレ・ミゼラブルは、バルジャンからコゼット＆マリウスへと愛が受け継がれる物語なんですね。

　という前提で、もはやマリウスさえも役者が限定されつつあることに気づいてしまいました。その要素は「天然」とにかくいーとこのお坊っちゃんで、お人好しの天然で、みんなに愛されるキャラ、で固定観念できあがっちゃったみたいです。ということで、今回も岡田さんマリウスがベスト。

　泉見さんも2003年より一回り成長して男らしいマリウスになりましたし、藤原さんも素直で将来の期待大なマリウスなのですが、やっぱり岡田さんが好き！

　ということで今回もかなり狙い打ちで回数を観ました。「天使たちの音楽」で跪いて祈ってみたり、コゼットに出会った後は頭にお花が咲いていそうだったり、全部ひっくるめて愛しい。中でも今回は、クールな東山アンジョに冷たくあしらわれる（笑）組み合わせが好きでした。アンジョルラスはフランス命で、マリウスはコゼット命。それが私にとってのレ・ミゼラブルなのです。

　そしてコゼットは、高音の安定ぶりで剣持さんがベストと思っていたのですが、今期は三人ともきっちり高音まで出て、ルックスや仕草ということでは河野さんのコゼットが好きでした。まさに「父親に愛される娘」の姿そのもので、とくに今井バルジャンとの組み合わせが最高でした。あと娼婦のシーンも、三人とも大変に色っぽく、見所の一つだったり。

　コゼットという役は、本人のカラーを出してくるよりも、物語に自然に溶け込めるかがポイントなのかもしれませんね。そして目立たないようで、実は物語のたたずまいや方向性を決めてしまう不思議な役。今期はつくづく、それを感じました。

６．テナルディエ夫人

　おっと、妻の扱いがこんなに後ろになってしまいました。今期は、森さんと瀬戸内さんのダブルでしたが、どちらも違う味わいで好きでした。

　夫を立てる陽性の森マダム。とにかく安心の歌唱力と、明るい存在感で見ていて心地がいいです。裕福な家でやんごとなく育てられていたら、いい人になったかもね、というマダムでもありました。

　一方瀬戸内マダムは、夫と対等にやり合い、意地悪さを全面に出したマダム。2003年には1ヶ月だけの出演でしたが、今期では瀬戸内さんならではの味わいが深まっていました。個人的にはアドリブのセリフが結構好きだったり。たとえば、ベガーズの後の「アンタ、コゼットがいたねえ！」後のシーンにつながるセリフで、襲撃のシーンにテナルディエ夫人はいないものの、計画的だったことを臭わせます。なおかつ、タイミングと声のトーンはシーンの流れに沿って、夫人のキャラに合っている。後半ではこれがないと淋しかったほどでした。

７．エポニーヌ

　今期もやっぱり、ＡＮＺＡさんのエポニーヌがマイベストでした。ルックス・声質とも好みですし、悲惨な人生と、その中で唯一の光となるマリウスへの想いというバランスがいい。使い走りながら、ふとマリウスを振り返ったりする仕草と表情が切ないんだなあ。

　坂本さんは透明感のある声質で、健気でいじらしいエポニーヌでした。新妻さんのエポニーヌは前回公演よりも恋愛色が強くなって、私の好みからはずれたかも。笹本さんはとにかく豊かな声量で、存在感のあるエポニーヌでした。

８．アンジョルラス

　すんません、最後ですが、今回ここ異常に長くなります。原作語りが入るから。っつか腐女子のＪＵＮＥ萌え語り入りますのでご注意ください。量があるので文字反転はしませんが、苦手な人はまるっと読まないで、＝＞コンテンツにお戻りください。

　2003年公演時に原作を読み、原作では一番好きなアンジョルラス。ただ、舞台のアンジョルラスとは別物で、脚本上舞台では原作再現は無理だろうなーとあきらめてもいました。しかし、今公演では、まさに原作のアンジョルラスに出会いました。東山さんの演じたアンジョルラスです。

　原作アンジョルラスの私のイメージはまず「22歳なのに17歳に見えた」「少女のようなみずみずしさ」「花を撃つようだ」と称されるその美貌。男らしい、というよりは中性的なイメージです。さらに「恋人の名は祖国」「生涯ただ二度の口づけ」はじいさんの手に→女関係一切なし。

　なおかつ、アンジョルラスは学生たちの間で「カリスマ」であって、「リーダー」や「指導者」は他にいる。つまり、自ら引っ張るというより、その名のもとに人が集まってくる象徴的な位置づけ。学生たちも、アンジョルラスに関しては対等の友というより、カリスマとして一歩引いています。たぶん、他の学生と気軽に肩を組んでふざけあったりとかもしたことがないんじゃないだろうか、という雰囲気。

　そしてクールビューティーな外見とはうらはらに、炎のような闘志を秘めています。祖国に自由を導くためなら、どんな哀しい犠牲もいとわない。そんなひたむきな人。バリケードが落ちた後も冷静に撤退を指示し、最期の最期まで優秀な指揮官でもありました。

　他人への接し方も常にクール、来る者拒まず去る者追わず。学生仲間も、その能力を駒として冷静に判断している感じ。たとえばマリウスに対して、舞台では過剰に構いますが、原作ではほとんど関わりなし。砦が落ちたときも、マリウスの無事を確かめずに酒場の扉を封じましたし。また自分を信奉しているグランテールに関しても、その能力にまったく信頼を置いていない。グランテールが「俺がやる」と役割を申し出たときも「きみが？」ほとんど相手にしていません。ただ、一緒に死にたいと願い出る最期には、微笑んで手を取る。←ちなみにここが私の原作最萌えポイント。わかっているのですよ、彼は何もかも。

　ただこれ、舞台で再現しようと思ったら、演出上無理が出ます。「誰も寝るな」の直後に「マリウス少し休め」な人だし、「死のう！僕らは死など恐れはしない」で、マリウスが負傷したくらいでヤケになって旗振って真っ先に死んじゃうし。舞台のアンジョルラスは、原作のクールビューティーはどうしたって無理。

　そう思っていたのですが、東山アンジョルラスはやってくれました。

　とにかくまず、マリウスに冷淡。カフェに遅刻してくるマリウスに「遅刻だぞ」迷惑そうな叱責に始まり、恋を語ろうとするマリウス無視で作戦会議開始。マリウスがあんまりうるさいので「マリウス、わかるけれど」邪魔だから黙ってろと説教に入る感じ。たとえば2003年マイベストだった吉野アンジョルラスだと「マリウスが革命よりも恋を大切にする」ことに対して怒っていたように見えたのですが、東山アンジョルラスは明らかに「作戦会議の邪魔するな」まずここで、目から鱗が落ちました。何だよ、こうすれば舞台でも原作アンジョルラスになるじゃん、と。

　その後「マリウス少し休め」も「誰も寝るな」の後に少し間を取って、陣全体を見回しながら戦闘不能の奴がいるのを発見→指揮官命令で休めの雰囲気。声はすごくやさしいんですけどね、強い者が弱者を包むやさしさで。また「命を大事に。子供ある者と女たちは去りなさい」を普段の強めの声から、やわらかい声を使うことで、戦いの真価（もはや女子供を巻き込んでまで得る価値のある戦いではない）を見極めている指揮官らしさをうかがわせる。

　ああ、原作のアンジョルラスだわ……とうっとりしているところで、トドメ。旗振りを止めようとするグランテールの手を握り返し、ふわりと白い花のような微笑を。東山さんは色が白いので、ライトが一筋当たるだけで眩しいほどにお顔が白くなります。そこで端正な顔立ちを、はかなく静かに微笑ませて。原作の「一緒に死ぬことを赦してくれるだろうか」と懇願するグランテールに、微笑みかけて手を取るアンジョルラス←しつこいようですが、私の原作最萌えポイント！とオーバーラップして、時が止まったように感じました。で、はっと我に返れば、バリケードを駆け上がる背中、大きく振られる赤旗、ひときわ大きな銃声。

　実はこの微笑み、席によっては見えませんので、私一回しか確認できておりません。それでも大変鮮烈で、今でも瞼の裏に焼き付いております。セリフでこそ絡みはないものの、全編通してグランテールと視線を交わす場面も多く、アンジョルラスに惹かれずっと見つめているグランテールと、わかっていて好きにさせているアンジョルラスの、原作の関係を思い起こさせて萌え。

　ちなみに東山さんのルックスは、身長はそう高くないものの、原作アンジョルラスに中性（というか天使？笑）を求める私にとっては、ノープロブレム。バルジャベに匹敵するほどのっぽアンジョルラスよりむしろ好き。顔立ちは遠目の印象ですが、整ってどこか中性的。眉は凛々しくきりり、眉根を寄せた哀しげな表情（恵みの雨とか）のよく似合うアンジョルラスでした。サラサラの茶髪は、上のブロックだけリボンで後ろに止めて。←これ、私が気合い入れるときによくやる髪型で「お嬢様結び」と呼んでいたり。

　かと思えば胸板は厚く、声も低く男らしく、腕を振り上げて人に命令を下す姿がよく似合い、なおかつ美しい。ダンスの人ならではの動きの美しさというのでしょうかね、ただ立っているだけでも姿勢が良くて、目を引くんですよ。ちなみに私が最初に東山アンジョルラスに注目し始めたのは、バリケードを上り下りする後ろ姿のお尻の筋肉の美しさだったりするのですが（笑）今さんの動きにもどこか通じるものがあるかな、思い切りよく乱暴にも見えるのに、描く軌跡の美しさは息を呑むほど。腕や上半身で目を引き、足下は軽やかにステップ。

「レッド＆ブラック」で「立てー！」と煽る手の動きも好きですし、バリケードを築くときの指示も派手。「弾がない足りないぞ」で空の火薬袋をぼーんと投げ出す腕の動きも実は好き。日常生活でその仕草はないだろ（笑）と思うものの、舞台上の東山アンジョルラスならアリ。

　あの長く動きの美しい腕は、まるで他人に命令するために生えているよう。（何だそりゃ）皆にかしずかれ、なおかつかしずかれて当然と思っている。これまた一度しか見たことがないのですが、最初の行進で大八車に東山アンジョルラスが乗るときに、背の高い学生が手を貸していたことがありました。学生は当然大八車の下で、掌を上に向けて背の高くないリーダーをエスコート、アンジョルラスは当然のように手を取らせて優雅に乗車。もちろん歌の途中ですし、流れのまま礼を言うでもなく、ごく自然に侍従に手を取らせるお姫様に見えて、ドキドキしてしまいました。飽くまでも、仕草は男らしく、かつ優雅に堂々と。

　で、さらに腐女子話。原作アンジョルラスは、学生仲間と肩を組んだこともない雰囲気だと書きましたが、東山アンジョルラスにも同じにおいを感じます。原作ほど極端なお花ちゃんではなさそうですが。なのに、岡田マリウスったら後半「ここにいても同じだ！」でガバッとアンジョルラスをハグするようになりました。気持ちが高ぶっての衝動なのか、これから死にに行く別れの決意なのか、とにかくガバッと。で、東山アンジョルラスの反応→当初は硬直。

　だって、アンジョルラスと来たら女と恋も語らわないし、学生同士でも一目置かれて肩を組むのも畏れ多いお花ちゃん（←原作準拠の私の理想）ですから、いきなり正面から汗くさい男（いやアンジョルラスも汗くさい男のはずですが）にガバッと抱き込まれたらびっくりもしますって。いつも遠くから見つめていたグランテールや、姫のお手を取っていた学生からしたら、どさくさに紛れてなんちゅー無礼をこの天然ボケマリウスめ！てなもんでしょう。

　その後慣れてくると、一瞬ぎょっとはするものの、マリウスをなだめるように抱き返して止める大人なアンジョルラスになりましたが、今思えば、あの硬直はアドリブ慣れしていない東山さん自身の戸惑いもあったのでしょうね。原作アンジョルラス萌えの私にとっては、原作通りのキャラだとどう返せばいいんだろう？と真剣に悩む一瞬でもありました。岡田マリウスがまた、その日の流れでハグしたりしなかったり気まぐれなので、アンジョルラス役はいろいろ身構えて大変だったと思われます……。

　舞台版のアンジョルラスでは相変わらず吉野さんがベスト（常にこめかみに血管の浮いてそうな熱さが好きで、逆さ吊りが一番美しい！）ですが、原作アンジョルラス至上主義の私にとっては、東山さんは唯一舞台で、内に情熱を秘めたクールビューティーの原作アンジョルラスを実現してくれた役者さんでした。

　はあはあ、いったいどんだけ語ってるんだ、アンジョルラスで。だって原作アンジョルラスは私のドツボなのよう〜と言い訳しておきます。言い訳ついでにラクガキまで掘り出してみたりして。＝＞ラクガキ・非文章

　以上、2005年長すぎるレミゼレポ終わり。次回は12月と1月の大阪らしいですが、駒田さんの出演予定がないので、遠征するかどうかは微妙なところ。1月は博多で「屋根の上のヴァイオリン弾き」もありますし、業務繁忙期で土日もなくなるからなあ（泣）

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fin.