2016年の初演から、1年間を空けて（2017年は別キャストでした）、オリジナルキャストの2018年版。前回との違いを検証しようと自分の観劇記を見返したら、ない……！　まさかこの作品で観劇記を書いていなかったでござるの巻。出先にポメラを携帯して文章を書かなくなってから、もうそんなに年数が経つんですね。（出先では主にソシャゲをやっています、非生産的な）
　一応、初日の日記だけは書いてあったので、初演時の記録としてコピペ。

＜ココカラ＞
○2016/06/13(月)
　贔屓役者の舞台が昨日（6/12）初日だったんです。「キム・ジョンウク探し」（※初演時はこっちのサブタイトルが前面に出てました）面白いですよ！
　贔屓役者が24役、クルクル変わる扮装と役作りに大爆笑。いきなりトイレで踏ん張ってたり、韓流と言えばのペ様コス（左半分）＆右半分は元気な老婆だったり、インド人ダンスは乳首丸見えだったり、AKB風のアイドル衣装にツインテでパンチラしたり、バスローブにシャワーキャップだったり、ドラゴン○龍が出て来た時は大爆笑……こう書くと何のお芝居かさっぱりわかりませんね(笑)いや、ドッカンドッカン笑わせて、キュンとしてホロリな舞台、面白かったです！
　ロビーでは贔屓役者の缶バッジガチャを引くという謎体験。2.5次元流れの役者さんが出演しているからだろうなあ。
＜ココマデ＞

　いや〜、何が何だかさっぱりわかりませんね！
　それでは2018ver.の感想、いってみましょう。って、2018ver.も時間経ってから書いてるからうろ覚えだよ！　記憶の改変があったらすみません。
　韓国産の、出演者が3人だけのコンパクトなミュージカル・ラブコメディ。同じ韓国産のサ・ビ・タも登場人物3人でしたが、「あなたの初恋探します！」はもっとたくさん役があります。配役は、ヒロインのアン・リタ役を彩吹真央さん（愛称：ゆみこさん）が演じ、ヒロインの初恋の人と、初恋の人探しを請け負った探偵？役の2役を村井良大さんが演じ、残り22役は全部、マルチマン・駒田一さんが演じます。偏り過ぎ(笑)まあ、駒田一という芸達者な役者を魅せるには、このくらいの役数でバリエーション豊かに！ということなのでしょう。
　物語のあらすじは、比較的シンプル。若者・ミニョクが会社をクビになり、「あなたの初恋（の人を）探します」会社を起業し、同じく新聞社をクビになったアン・リタが、父親に「働かないなら結婚相手を連れて来い」と言われ、ムン・ミニョクの会社を頼る。アン・リタの初恋の人を探す旅のドタバタ道中で、二人の間に特別な感情が生まれ……アン・リタが運命の人として選ぶのは誰なのか？という物語。
　以下、芝居の流れに沿って、簡単に駒田さんの役にコメントしたいと思います。（アン・リタの恋はどこいった）

○燕尾の人
　オープニングはソング＆ダンス。シルクハットに燕尾の駒田さんが現れ、ジャジーな歌声でスタイリッシュに舞台の世界へ誘います。「その人があなたのDestiny」街中で、何度もぶつかりそうになったり、ニアミスしているアン・リタとミニョク。

○キム部長
　ミニョクの会社の上司。いきなりトイレの個室で、ふんばりながら現れます。ドアは胴体付近だけ隠していて、顔とズボンをおろした足元は丸見えの演出。ワイシャツにネクタイ、ポマート撫でつけ系のおじさんで、演歌調の歌を歌い「水に流してぇ〜」で水が流れる。そこへミニョクが登場し、トイレの個室に企画書を投げ込み（悪気はない）、部長の怒りを買ってクビになります。個室から出て来た部長はまだベルトも止めてない。ミニョクともめたはずみにズボンが落ちて、現れるのはお約束のしまパン。すがるミニョクに「はなして！　すぐに出番なの！」と叫んで退場。次の役の着替えに行くわけですな。

○ヨンスク（ミニョクの彼女）
　職を失ったミニョクは、でもまだ僕には恋人がいる！と電話をかけます。電話の相手は、金髪の巻髪ウィッグにどピンクのガウン（中はたぶんネグリジェ）のヨンスクちゃん。貧乏なミニョクでも愛しているわと言いながら、仕事をクビになったと聞くや、秒で「サヨナラ！」……まあ、早めに別れたほうがいいタイプの女やこれ(笑)

○編集長
　いっぽう、アン・リタは新聞社の編集長に「どうして従軍取材の許可が下りないんですか！」と抗議している最中。編集長は、将来スダレになることが予測される9:1分け系のヘアスタイル、丸い黒縁眼鏡、アームカバーをしたおじさん。おとなしく旅行記事でも書いてなさいよ〜、リタちゃん、と宥めます。怒ったアン・リタ「許可がもらえないなら、辞めます。自由に生きます」おどしとして辞職願を提出。と、編集長はそれを奪い取り「わかったよ。引き止めないからね！」アン・リタも新聞社退社となりました。

○アン・リタのお父さん
　帰宅し、新聞社を辞めたことを父親に報告するリタ。従軍取材に出たいのだと言うと、嘆き（そりゃそーだ）、「働かずにバックパッカーにでもなるつもりか！」（そっち？）、リタにスクワットや腕立てを命じる。お父さんの衣装は、迷彩ジャンパーにズボン、迷彩キャップに大きなサングラス。再演では細かい設定が省かれていましたが、初演ではお父さん、軍人上がりの設定が随所で描かれていました。妻に死に別れ、男手一つで一人娘のリタを育てた父。ただし育児方針は割と過激で軍隊式、そして強引。「新聞の18ページを見ろ！　お見合い広告を出しておいた！　これがお見合い会場の地図だ！」怒涛の展開にリタは仰天するも、父親は聞く耳を持ちません。
　ちょっと待ってとすがるリタを「すぐに出番だから！」と突き放し、音楽に合わせて、数歩巻き戻って口を開けてポーズする一連の動作がすごく好きです。小ネタ。

○タクシードライバー
　お見合い会場に向かうため、タクシーに乗るアン・リタ。セットは、車輪のついた丸椅子が3つと、運転手が握る丸いハンドルだけ。黄色い制服の駒田さんが「どう見てもタクシーだがね！」何故か名古屋弁で説明します。スト中なのに、一人だけ抜け駆けで稼いでるちゃっかりドライバーさん。

○DJ
　タクシーのカーラジオのDJが囁く。DJの声も駒田さん。イケボ系の囁きです。「運命の人はすぐそばにいるのかも……」タクシードライバーが満面の笑みで振り向くも、リタちゃんは新聞で顔を隠す。つれないなあ。私ならうれしい(笑)
　そして流れる流行歌「Destiny」。ボーカルグループ「Distieny」これも役に数えていいのかな？
　そこへタクシーの相乗りをお願いするミニョク。ストでタクシーが全然捕まりませんからね。見えない車の窓にミニョクの指を挟むなど、一悶着あって、3人でタクシーに。3人で歌う「Destiny」OPにも使われたお芝居のメインテーマ。OhOh……で始まるジャジーな大人のナンバー。「その人があなたのDestiny♪」タクシードライバーの歌唱力にはミニョクが「うまっ！」とビックリします。

○ペ・ヤング
　舞台下手のお見合い会場に着いたアン・リタ。日本の「韓流」火付け役ドラマの耳覚えあるメロディが流れ、某ヨン様似の男が登場。茶パツのふんわりウィッグにマフラー、コート、差し出した手から雪だるまを出す。名乗りは「ペ・ヤングです」おい(笑)
　さらにこの人、かたくなに左半分の横顔しか見せてくれない。とっても不自然。アン・リタをすかしボイスで口説き「素敵だわ、この人」と思わせるも……「ちょっと失礼します」不意に席を立つ。

○アパートのおばさん
　舞台上手のアパートではミニョクが大家？らしきおばさんに、恋人・ヨンスクの行方を聞いている。大家のおばさんは、黒のボンバーヘアをバンダナでとめ、原色パッチワークのアッパッパみたいなワンピース、ショートソックスにサンダル、口紅も濃い、ガラガラ声で背中の曲がったザ・おばさん。ただし、右半分の横顔しか見せてくれないし、右足の向こうにスラックスの左足が見えてるよ？
　おわかりでしょうか。左半分がペ・ヤングさん、右半分がおばさんという阿修羅男爵状態（若者にはわかるまい）なのです！
　歌に合わせ、クルクルと向きを変えて、下手・リタ、上手・ミニョクを交互に相手。たまに逆になって「あ、やべ」ってなってたり(笑)
　このシーンで、リタは「初恋の人が忘れられないから！」とペ・ヤングを断り、初恋探しのきっかけを作ります。ミニョクはおばさんに「初恋の人を探しておくれ」と頼まれ、初恋探し株式会社を設立することを決めます。
　初恋の人に会いたくない人なんていない、とおばさんは言いますが、初恋の人ねえ、会いたくないほうが多いんじゃないですかねえ？　とくに女性は。恋愛について「男性は名前を付けて保存、女性は上書保存」と言いますが、まったくそのとおり。今の恋がすべてなので、前の恋は掘り起こさなくていいんです。私はむしろ、永遠に葬り去りたい派(笑)　後にアン・リタが「きれいな（初恋の）思い出は、きれいなままで残しておきたいから」と言いますが、年数経った恋ならなおさら、触らずそっとしておきたいものです。

○ミニョクのお母さん
　電話で母親に会社を始めたことを報告するミニョク。初演では、実家の犬（フレンチ・ブルドック）がうるさい漫才が入っていましたが、今回はカット。お母さんは会社の経営より、息子の嫁のほうが心配。「隣の家の息子はもう子供が二人、裏の家の息子は嫁が二人いるってのに、お前はどうなの？」嫁が二人って、お母さん、羅刹の家の裏に住んでんな(笑)

○占い師
　さて、父親に無理矢理ミニョクの会社に連れてこられたリタ。初恋の聞き取り調査が始まります。　初恋の人の名は「キム・ジョンウク」年齢や職業、住所等はすべて「わかりません」。出会ったのは「インド」リタの学生時代の短期留学先。
　ここまで聞いた父親の反応が過激で超面白い。「お前を留学させるためにどんなに苦労したか……それなのにお前ときたら、勉強もせず、男の勉強を……っ！　まさか初（ピーと自分で言う）験……！　っ妻よ、何故死んだ〜！」ミニョクの机をチラシの束で叩き、床に転がり、土下座、拝礼をはじめます。
　初演の時は、この後の占い師のほうがテンション高かった記憶ですが、今回はここのお父さんが最高潮かな(笑)ミニョクに宥められて退場します。退場時の小ネタ、階下のアイドル喫茶のオススメの子を確認する「ジェシカよ〜し！」が好き。
　次の出番は、リタの思い出話。男の子にいじめられて泣いている子供のリタを「夕食の支度で忙しい時に〜」お玉片手のエプロン姿で慰めるパパ。「リタもいつか運命の人に会う」「さびしげなフェイスライン、スマートな鼻筋、ロマンティックな声をした、パパのような人だよ」この頃のリタの友達はたった一人パパだけだったそうで……お父さん、いいお父さんだ！
　さて、次は占い師として登場。韓国の民族衣装にどじょうひげ、背景に韓国の伝統の神様なのかな？（日本の七福神みたいな……）の映像を背負って、これまたテンション高く「キタ〜！　キィ〜タ〜ゾ〜！」お父さんのシーンから連続してテンションが高すぎて、血管ぷちっといかないか心配になるくらいです。
　占い師に導かれ？（占い師は「運命の人はそばにいる」って言ったんですけどね）運命の人を探しにインドへ旅立つアン・リタ。

○CA
　インドへは飛行機で。おかっぱのCAはもちろん駒田さん。裏声で「Fish or chicken？　ベラベラベラベラ」ベラベラはカタカナ、英語ではアリマセン(笑)　まったく英語のできないリタを、隣の席に乗り合わせた青年キム・ジョンウクが助けます。CAは鼻で笑い、リタの単語帳を取り上げ、リタの口真似をして「アイワナ〜」とからかって退場。意地悪(笑)
　出会いから、リタはジョンウクに運命を感じますが、道中一緒に行こうと誘うジョンウクを、何故かリタは断ります。「彼がもしも運命の人なら、きっとまた会えるはず」
　運命を試す系の女かよ。英語もできず、方向音痴なのに、度胸あるなリタ。このへんからリタは理解できないヒロイン。

○インド人
　インドへ到着したことを表現するインド人。赤いターバン、キラキラした緑のチョッキ、黄緑の帯、ふくらんだカーキのパンツ。基本乳首は丸見えです。（54歳おじさんの乳首なので、公序良俗的に何の問題もありません）インドの名所を紹介しながら歌い、踊り、魔法のじゅうたんに乗ります。（絨毯の端に紐つけた棒で、自分でパタパタなびかせるだけの演出）そして片手に赤コブラ、左手に青コブラの腕人形を装着し、赤コブラに首をかまれ「ギャ〜」の後、青コブラが赤コブラを噛んで助けてくれるという人形芝居を……文字で書くと何ですが、実際見るとすごく可愛いんですよ！（人形者）
　ここでコール＆レスポンスで会場を温めるのもお仕事。カタコト系の日本語で「私は預言者です。ワタシがナマステ〜と言ったら、皆さんは『イェ〜』とお祈りの言葉を言いたくなる」予言じゃねーし、お祈りの言葉じゃねーし(笑)サイドだけ、男性だけ、10代だけ……とレスポンスさせて、10代でレスポンスした人の顔を見て「嘘つき」等と罵るのがお約束。
　さて、リタとジョンウクは、ラクダに乗るツアーの申込で2か月ぶりに再会します。ところが、捻挫をして療養せざるを得なくなったリタは、またしてもジョンウクの看病の申し出を断る。まあ、これは理解できますね。見知らぬ男に看病を頼む若い女はむしろ怖い。
　ジョンウクはリタを置いてラクダツアーに出かけるのですが、行き先は何と客席。インド人に連れられ、何故かF列の前を通る。通路じゃないので、ガチで狭いです。客席が荷物をよけて協力しないとダメ。突っ切ったところで、ジョンウクが気持ち悪くなったらしく、また同じ列を戻る。戻りながら、ジョンウクは客に向かって「オエ〜！」ものすごい至近距離になるらしいです。村井君は汗っかきなので、村井汁（村井ファンの方が、汗をそう呼んでいるらしいです）もかかるんじゃないだろうか……。私は通過されただけなので、わかりませんが。
　吐いた客にインド人が「そこは世界遺産よ！」とコメントしたりします。ちなみに駒田さんのお母様がF列で観劇していた日は「この人、わたしのお母さんにそっくりよ！」いや、本人です(笑)
　そしてジョンウクはたった二日でリタの元に戻って来る。「ラクダの頭にゲロ吐いたよ！　ゲロでラクダ死んだよ」（ラクダ、そんなんで死ぬん？）「酔い止め飲まないからよ！」叱るインド人。リタは驚き顔。
　だってジョンウクは飛行機の中で「ラクダは酔うらしいので、必ず酔い止めを飲んでくださいね」と教えてくれたのです。酔い止めを飲まなかったのは、わざと……？　わざとだとすると、なかなか強引なジョンウクからのアタックですね。ジョンウクもリタに運命を感じ、そばにいたかったのでは？　リタは捻挫して数日は動けないわけで。具合の悪いジョンウクにほだされ、添い寝をするリタ。暗転。これたぶん、リタの父親が絶叫してた初（ピー）験なのではないでしょうか。ま、話的にはどちらでもいいのですが。ここで恋仲になります。ただし、まだ名前を知らない。いや、さすがに名乗れや。
　その後もかたくなに、ジョンウクとの同道を断るリタ。駅で別れる際、航空券の半券をちぎって渡し「二か月後に帰るわ。そのときまであなたの気持ちが変わらなければ、空港まで迎えに来て」ジョンウクは名前をリタの手のひらに書き、自分の旅行中の日記と余ったルピと円を渡し「大阪で乗り換えの時に、僕にお土産を買ってきて欲しいんです、薔薇の花を一輪」……えーっと、ジョンウクって結構アレな男やね。イケメンなら許される？　やっと最後に名前を聞くも「私の名前は、アン・リター！」リタの声は汽笛にかき消される。
　これがリタの初恋の思い出でした。
　帰国後、空港での待ち合わせには「私が約束の便に乗り遅れちゃって」会えず、「メールにも返信がなくて」それっきり。

○ジェシカ
　結局、名前以外の手掛かりがなく、キム・ジョンウク探しは難航。進まない調査に、ミニョクとリタが口論していると、アイドル喫茶のジェシカちゃんが珈琲の差し入れに来ます。（ミニョクの会社の下の階のアイドル喫茶、出前営業もするようです）
　ジェシカちゃんは、ツインテールに口を尖らせた（アヒル口か？）あざとい表情、チアガールみたいな衣装、ミニスカの下は白いレースふりふりのパンツでお尻にLOVEの赤スパンコール文字入り。ダンスでめくって見せてくれます(笑)
　初演では赤チェックの制服でA○Bを歌ってましたが、今回はTW○CEでTTポーズ連発。ジョンウクのことを「お兄ちゃん」と慕ってまとわりつくのが、いい感じにうざい(笑)　リタのことは「英語が全然できないくせに」えっ、インド行き飛行機のCAはジェシカだったんかい？　だとしたらお前何歳だよ！(笑)「あたしは四か国語話せるわよ！　サンキュー、ダンケシェーン、シェシェ、カムサハムニダ！」それなら私にも話せるわ(笑)
　ジェシカと3人で歌うナンバー「ほんとに見つかるの！？」は突き抜けた和音で、とても印象的です。いや、ジェシカちゃんが強烈過ぎて印象に残るのか？　昔、SM○Pの中居くんがやってた計算マコちゃんのウザさはそのまま、見た目を倍の胴の太い（失礼；）オッサンにしたみたいな、でも歌って踊れちゃう違和感。後に脳内でうっかりリピートしやすいナンバー。
　公演グッズのジェシカちゃんTシャツ（スタバ風コーヒーとメガネがプリントしてあるだけ）は普段使いしやすいので2色買いました♪　たくさんある駒田さんの役の中で、看板娘的な役ですね。（本役はお父さんだと思いますが）

○ドラゴン紫龍
　さて、あまりの手掛かりのなさに、新聞広告を出して全国の「キム・ジョンウク」を募るミニョク。応募してやってきたのは「ドラゴン紫龍だ！」紫タイツに段ボールでできたドラゴン聖衣（原作版）をまとった駒田さん。長い黒髪じゃないし「ドラゴンの紫龍を呼び出しておいて、人違いとは生意気なぁ！」口調も変なオッサンだし、カケラも紫龍じゃないんですけど、正体は「キム・ジョンウク54歳！」らしいんですけど、昔ハマっていたヲタクの腹筋は崩壊しました(笑)　後に本人に聞いたところ「聖闘士星矢ぜんぜん知らない。演出家がむかし舞台やってたんだよね」とのこと。
　対処に困ったミニョクは「スコーピオンのミロ！　スカーレットニードル！」こちらは子供の頃に見て知っていたらしいです。でも何でミロ？(笑)　やられた紫龍、退場。

○オネエ振付師
　次に来た「キム・ジョンウク」さんはダンスの振付師？　紫龍流用の紫タイツの腰に布（パレオみたいな）を巻き、ヘアバンド、ターンターンステップターン♪等と口ずさみながら登場。人違いです、と言うミニョクをオネエ口調で口説き「フォッシー！　あなたがほっしー！」股間（詰め物入り）を突き出して迫る。これまた濃いぃな(笑)
　アン・リタが恋人のフリをして助けに入ると「相手がいるならそう言いなさいよ！」怒って、電話でリハに呼び出されて退場。まあ、この人のおかげで、ミニョクとリタは物理的に接近するわけです。

○詐欺師
　次に現れた「キム・ジョンウク」は、思い出のキム・ジョンウクと似た服装、二枚目風のウィッグと仕草。アン・リタを見るや「あっ」「君はまさか」「ちょっと顔を見せて！」グイグイ迫り、客席に「まさか本物設定！？」と一瞬思わせ「人違いでした」落とす。驚いて足を挫いたアン・リタを手当てすると言いながら、靴下脱がせたリタの足の裏を自分の額に当てたり、捻挫なのに「手術する」とメスを取り出したり、この人もだいぶおかしいぞ？
　そして自称・占い師と名乗り「君たちとってもお似合い」「二人はつきあうべきだと思うよ」ミニョクとアン・リタの未来を予言します。
　ミステリアスな男の正体は詐欺師。男が帰った後で「財布がない！」と気付くミニョクとアン・リタ。詐欺師の男は一人笑い「次行ってみよう、すぐに♪」場面転換を促します。マルチマンの役割は、様々な人物を演じるだけでなく、舞台の進行と空気を操ること。舞台そのものであり、語り部である。ストーリーテラーの顔が垣間見える瞬間です。

　この後からしばらくは、ミニョクとアン・リタのパート。「キム・ジョンウク」を探し、韓国中を旅する二人。初演では道中、駒田さんが強烈な老婆役で登場しますが（船着き場でミニョクに迫り、真夜中の山を「おじーさーん！」と叫びながらキックボードで横切る）、再演ではカット。物語はわかりやすくなりましたが、印象の強い約なだけに淋しくもありますね。
　山で遭難した二人は、一枚の毛布を分け合い、野宿をします。ミニョクの、想いを伝えることさえできなかった初恋の思い出「どうかその人と幸せに」を聞いたアン・リタは、何故かミニョクにキスを。驚くミニョク。何故かもっと驚いているアン・リタは、真夜中の山中へ走って逃げてしまいます。

○KTXの車掌
　翌日、発射直後のKTX（韓国高速鉄道）に乗っているミニョク。車掌のアナウンスで、客席はKTXの中だと知るわけです。
　ミニョクは一晩中、アン・リタを探していた模様。後から合流してきたアン・リタに怒りをぶつけ、二人は口論に。

○KTXの販売員
　そこへ販売員に扮した駒田さんが「お弁当にお茶はいかがですか〜」と現れるも「いらないよっ！」二人同時（息ぴったりだな）に断られ、秒で退場。
「運命の人なんて一生見つかりませんよ！　目をつぶって、見ないふりをしているんだから！」ミニョクの暴言にアン・リタが泣き出し、けれどミニョクはアン・リタを心配しているだけ。気まずさに離れた席に移動したりするものの、やがて寄り添って眠る二人。

　以降は、車掌のアナウンスで淡々とKTXに乗っている間の時間経過を表現。ソウルに帰り着く頃には、二人の距離は縮まっています。

○バーのマスター
　場面変わって、閉店間近のバー。駒田さんは、髪をオールバックになでつけ、蝶ネクタイのベスト姿、カウンター回りを掃除しています。もう演奏やめ、残業代払わないよとバンドマンたちを止め、閉店準備。携帯電話で妻に連絡の小ネタ。
　そこへ上機嫌で入店してくるミニョクとアン・リタ。「すみません、閉店なんですよ」マスターが迷惑そうに断るも「お願い、一杯だけ〜」異様なハイテンションでカウンターに座ってしまう。どうも直前まで別のお店で二人仲良く飲んでいたようです。マスターは二人にビールを出して「一杯飲んだら帰ってくださいね」と退場。
　翌日がミニョクとリタの契約最終日。これで二人の旅も終わり。契約が終わった後「君に会いたくなったら、僕はどうすればいい？」酔いに任せたミニョクの告白に、キス寸前のムードになるも「酔っ払っちゃった〜」逃げ出すアン・リタ。取り残されるミニョク。
　さて会計のために戻ってきたマスター、何故か裸にバスタオルを巻き、シャワーキャップまでかぶっています。「あんまり帰らないんで、シャワー入っちゃいましたよ」何で！？　このバーにはシャワーまでついてるんかい！？　いやまあ、衣装替えの都合でしょうけど(笑)　この舞台は本当にいろいろな駒田一が見られます。
　ここでマスターがアン・リタの落し物に気付き「保険証……キム・ジョンウクさんの」実はアン・リタがキム・ジョンウク（本物）の保険証を持っていたことが発覚。顔色を変えるミニョク。事態は急激に動きます。

　インドで別れたとき、キム・ジョンウクは日記をアン・リタに渡していました。そこに恐らく保険証が挟まっていたのでしょう。
　何故嘘をついていたのかと、怒るミニョクと父親。アン・リタはキム・ジョンウクへの手掛かりを持っていたのに、それを隠していた。空港で会えなかったのも、恐らくわざと。いったい何故？　この疑問は客席も同じ。

○ポッポ―の人
　場面が変わって、駒田さんは黒のボブヘア、赤いタイトスカートのスーツに揃いの帽子をかぶった女性の姿で現れます。調子っぱずれのラッパを吹き鳴らし、神がどうのこうのと呟くことから、宣教活動を行っている女性のよう。ラッパの音がおかしいことについて「電波が悪いわね」等と日替わりのおもしろコメント。
　ベンチに腰掛け「みなさん、お待ちかね。本日の糧をお配りする時間がやって参りました」足元の鳩にエサをやります。台に取り付けられ、エサをついばむ鳩は3羽。どうも駒田さんが足で操作しているようですが、1話だけ動きが悪い。その鳩をガッと叩いてまた笑いを取る。乱暴だな(笑)
　ベンチから立ち上がり「今度はあなたの番よ」舞台の上から、最前列の客を一人選んで指名します。「お鳴きなさい『ポッポー』よ」いわゆる客席弄りですね。え、何で？　私？　と客が戸惑っていると「そうよ、あなたよ」「他に誰がいるの」「あなたが鳴かないと、終わらないわよ」ドＳに煽ってきます。私は準備万端でしたので「これ、練習してきたわね」つまらなそうにされました。それはそれでＳ。弄られた客は、韓国のりをお土産にもらえます。舞台上から放り投げられるので、これまたＳっぽい。
　客席弄りが終わったところで、ミニョクが登場。ソワソワと落ち着かず、宣教師に「ちょっと話を聞いてもらえますか」と話しかけます。要約すると、そこの喫茶店で、友達が人と会っているのを待っているらしいのですが、宣教師の受け答えでどんどん不穏なことに。「浮気ね？」違いますよ「浮気しているのはあなたね」違うってば「汝姦淫するなかれ、悪霊退散！」十字架を突きつけられるミニョク。えーと、この人の職業、宣教師で合ってます？(笑)　真相を理解したポッポーの人は怒って去ってしまいます。鳩の台を紐で引いて去るのが何ともシュール。

　喫茶店から出て来たのは、アン・リタ。本物のキム・ジョンウクと会って、話をして「それだけ」安堵しながら、それでよかったの？と尋ねるミニョク。アン・リタは、運命の人はそばにいるってわかったから、と。あなたこそ私のDestinyと歌い踊る二人で、ハッピーエンド。運命は遠くからやってくるものではなくて、自分がその気になれば、すぐそばにあるってことなんでしょうね。

○空港職員
　そしてエピローグ。昔の回想シーン。場所は日本の空港。駒田さんはカウンターの空港職員。これまたおかっぱの女装です。
　日本に住んでいた頃のミニョクが「初恋の人の結婚式に間に合わない。どうしてもソウルに行って、彼女に言いたいことがあるんです」と頼みますが、満席のため、すげなくお断り。「言いたいことがあるなら、前もって言っておけばいいのよ」と毒を吐き、おちょくってます？とミニョクに言われれば「私、チョコなんか食ってませんー」と返すこれまたいい感じにイラつくキャラ。駒田さんの女装は基本こんな性格設定かい(笑)
　ちなみに彼女のネームプレートは「KIMURA」キムラ・ジュンコさんという設定らしいです。こんなとこまでキム・ジョンウクにかけるとか、凝ってますね(笑)
　そこへインドからの乗り換え便が到着し、アン・リタがソウル行きのチケットを2日後の便に交換して欲しいと申し出る。あいにく交換不可のチケットですが、僕そのチケット買い取ります！とミニョク。お互いに気付いていませんが、実はこんなところで、ミニョクとリタは出会っていたんですね。運命は、本当にそばにある！

　……ということがわかったところで、絞られたスポットライトの中「本日の業務、これでおーしまい！」カウンターの駒田さんが終了宣言し、冒頭の燕尾の人に早替え。プロローグにつながって、これまでずっとマルチマンの語りの中だったという舞台構成がはっきりと示されます。マルチマンは背景ではなく、ストーリーテラーで、この舞台の世界そのもの。スポットライトの中で、黒い帽子に前から手を添えて、ニヤリ笑う姿が最高にカッコいいです！
　最後は三人で歌い踊るエンディング。劇中ではスポーティーな衣装が多かったゆみこさん、最後は華やかなドレス姿。ただし、初演では三人とも燕尾でした。燕尾になると、ゆみこさんがいちばん脚が長くてウエストきゅっとしててカッコイイんだよな〜！←オイ。
　見終わった後の感想は「アン・リタめんどくせ」ですかね。（ミもフタもない）恋愛したいならすればいいじゃん。したくないなら、しなきゃいい。意地を張って、素直になれなくて、だって怖くて、でも本当は恋愛したいのってヒロインはめんどくさい。
　初演ではミニョク＝キム・ジョンウク？のミスリードが仕込んであって（何せ役者が同じだし、どっちもすぐ乗り物酔いするし）、そこにハラハラしたりするのですが、再演のほうが「運命はそばにある」（だから恋愛したいならとっととしろ！）テーマに一直線に行けてわかりやすい。
　あとはもう、ひたすら駒田一という役者のいろんな顔、あらゆる衣装を堪能する舞台です。ご本人がトークで「こんなに一日に何回も着替えることない」と言ってましたが、一日どころかほんの2時間の間にこんなにたくさんの種類の駒田一を見るって、ファンにとってすごい贅沢ですよな。
　駒田さん、ゆみこさん、村井君の三人はとっても仲良しで、「劇団三人」を名乗っていたほど。また「初恋探し」か、別の演目でも良いので、この三人の舞台を観たいものです。そんないつかに期待しつつ、アデュー♪（今、駒田さんとゆみこさんはマリー・アントワネットで共演中なもので）

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fin.