「撃墜王ビリー」ラパン・エ・アロ 恒例の壊れ日記です。損壊度はいつもより激しく、キャットフード並になると思われます。キャラクター的には、子猫ちゃん・ヴィトのほうが好みなのですが、とにかく今回は「凄い」舞台でした。役者・駒田はじめの持ち味200%全開の舞台でしたので、興奮度はむしろ今回のほうが高いかもしれませんね。とにかく一人で17役をこなすという、演劇史上に残すべきモノ凄い舞台を見たぞ、という。 例のごとくネタバレです。詳細なネタバレになる予感がします。今回見逃して、再演を待ちわびている方はお読みにならないように。別に見る予定はないしーという方は、これを読んで地団駄踏んでください。（あのな） １．衣装：またココからかよ（笑） 舞台ごとに姿かたちの変わる？駒田さん。今回は、衣装・体型・髪型含めてとっても私の好みでした。 とにかく、痩せてました。2時間15分をずっと一人で演じるハードな舞台のせいでしょう。頬がコケてげっそり。うへえ、きついんだろうな！と思いつつ、（自分のことは棚に上げて）痩身好きの私はうっとり見惚れてました。髪は茶色がかったストレート。長すぎず短すぎずの坊ちゃん風。もう本当に何時間見つめていても見飽きない今回の容姿。 衣装のほうは、登場シーンは白いシャツにカーキのズボン、田舎の若者風の帽子。で、舞台に上がるなりいきなり脱ぎ始める（笑）白のＴシャツとトランクスになり、その上にズボン、ワイシャツ、吊りベルト、モスグリーンのネクタイに、軍服の上着。金ボタンがずらりと並んで軍服マニアにはたまらなく格好いいのですが、見るからに暑い！案の定、激しい動きにあっという間に汗だくに。それでも決してネクタイさえ緩めることはないので、それだけでも役者ってモノスゴイ（っつーか恐ろしい）と思います。 ちなみに、ピアニストのながいわ和子さんも同じ軍服。ボブスタイルの髪を後ろで束ね、上着は着ずに肩に引っ掛けての登場ですが、これがとっても格好いい！しかも、主人公ビリーの悪事を見ていた当直の士官という役どころでしたので、すらりとした長身を生かしてビリーの襟首を摘み上げ、振り向きざまに睨みつけるという素晴らしくＳな振り付け。相当に痺れましたわー。 今公演は衣装に止まらず、照明、舞台セット、役者の身ごなしまですべて含めてトータルに、一シーン一シーンが絵のように美しく、眼福でございました。ああ、全体絵のお写真を拝みたいわ〜。 ２．歌とダンス： さて、マキシ・ミュージカルというだけあってこのお芝居、歌がふんだんに入っています。私はセリフに音程をつけて歌うタイプのミュージカルは苦手なのですが、ビリーの一人語りが基本と言うこともあって、ビリーの気持ちを表現する方法として効果的に使われていました。セリフにはならない感情のニュアンスは、むしろ歌のほうが素直に聴ける。セリフを歌うな、心情をモノローグにするな、「いったいどっちなんだテメエ」私のような観客には、非常に的確な曲数だったと思います。 しかも、とびきりのいい曲ばかり！歌詞も曲もわかりやすく美しく、私にとってはこれまでに駒田さんが歌ってらした曲の中でもトップクラスに好きな曲ばかりです。 ちなみに私の好みは、おいらが子供であったとき（十二夜）、キャンディマン、リラのワルツ等。もともと一曲の中に物語があって、演じるタイプの曲なんですね。このへんに撃墜王ビリーから、（以下、タイトルはわからないので歌詞から適当に）空で踊りましょう、友よ若いまま、ふるさとのカナダ、カナダに帰りたい、乾杯！、飛べカナディアン、オレNo.1が入ってくるわけです。（って、ほとんどじゃん！俺たち戦争さ、戦うときは、歴史のダンス、もトップクラスではないですが、かなり好きだったりして） 歌には随所、ピアニストのながいわさんがハーモニーをつけてまして、これがまた素晴らしい。これまで、駒田さんって女声より男声とのデュエットのほうがきれいに響くんだよなーと思っていたのですが、今回はお相手がながいわさんで本当ーに良かったと感じました。幅と味のある駒田さんの声に、細く美しいながいわさんの声が絡んで、聴いているだけで気持ちがよいのです。 「友よ若いまま」ではピアノの椅子ひとつに二人で腰掛けて歌う場面が、セピアのスポットライトの中で、視覚的にもまるで絵のようでうっとりでした。と、この曲の中で「僕らは子供だったね」と歌う場面があるのですが、ここのビリーの表情が絶品。回によっても違ったのですが、駒田さんファンならピンとくるであろう？やさしくて少し淋しげな絶妙の笑顔を見せるのです。いろんな意味で胸がきゅーんとなる曲でした。 ダンスのほうは、まずは「カナダに帰りたい」の気だるげなタップダンス。タップというと元気のいい「タッタカタ」がイメージですが、今回は普通の靴と床で、やや気だるい曲に合わせて、甘く込み上げる郷愁にふと足が動いた風でした。ふるさとを想うビリーののびやかな歌声、郷愁に酔う甘酸っぱい笑顔と、もどかしげなダンスの絶妙な調和は、自分が口ずさむときにも足が動いてしまうほどです（変なたとえ） そしてオレNo.1のダンス。これはもうこの振り付けしかない、というくらい生き生きと身体が動いていて、見ていて大変気持ちがいいです。アップテンポの曲に、「人を殺したら英雄になった」という実は重く深い歌詞、「もう誰も僕を殺したりできないさ」撃墜王となったビリーの、傲慢に見えるのにあきらめにも通じた皮肉な表情。物語を演じる、声を聴かせる、ダンスを魅せる、の三拍子が揃ってまして、まさに駒田はじめの魅力全開。 この舞台、再演はもう勿論絶対にして欲しいですが、それより前にライブでも是非メドレーにして歌っていただきたいものです。 ３．客いじり 今回は会場が小さかったせいか、客席の観客を使って芝居をするという「客いじり」がふんだんに散りばめられていました。 私は初日、最前列のど真ん中と言う素晴らしいお席をいただきまして。いきなり、舞台の上から話し掛けられる。えっ、これは私に話し掛けてるのよね？危ない妄想野郎じゃないわよねっ？とドギマギしながら首だけでブンブンと相槌。その他にも「靴べら貸して！」と言われたり、シャンペン注がれて乾杯させられたり、写真を撮られたり、最前列のあっちこっちの席でいろいろ楽しいハプニングが起きていました。 そして極めつけは、妖艶な美女ラブリー・エレーヌ。演じるのは勿論軍服姿の駒田さんですが、羽毛のマラボーを首に巻き、流し目に半開きの口元、歌いながら客席をクネクネ練り歩き、羽毛で客の顔を撫でやがる！いきなり目の前が真っ白になり、ナニナニ？ナニが起きてるのっ？と羽毛が退いた隙に見上げると、ラブリー・エレーヌ（つまりは駒田さん）の妖艶な微笑が目の前に。うひっ！と思う間もなく、歌詞に合わせてまた目の前を羽毛で塞がれる。こしょこしょこしょの間中、私はずーっとパニックして凍り付いていました。こういうことするなら先に言ってくれよぅ、心構えが〜（笑）動けなくなっているのをいいことに、客の膝をマラボー置き場にするし。 最前列の客に飽きると（笑）さらにいじり客を求めて、通路を分け入るエレーヌ。ここでは顔を撫でるだけでは飽き足らず、肩を抱いたり、男前の坊主頭に音を立ててキッスをしたり、セクシーな？ヒップを振り振り押し付けたり。毎日何が起こるかわからない大爆笑。 一度にたくさんの人々に観ていただけないもどかしさはありますが、こういう観客を巻き込んだ盛り上がりは、小劇場の醍醐味ですね。たまにはいいな〜、とニヤニヤしてみたり。 ついでにこの席は、塹壕のシーンで舞台の縁に座るビリーと膝をつき合わせる状態でして、手の届く距離で汗びっしょりの頭を抱え込む姿には、抱きしめてあげたい！母性本能をくすぐられて困っちゃったことは内緒です。 ４．空中戦：詳細ネタバレ突入ですよ〜。 さてこの舞台は、空中戦の場面を抜きには語れません。第一次世界大戦の最中、植民地カナダからイギリス空軍に参戦し、撃墜王となった「ビリー・ビショップ」の半生を描いた物語ですから。 舞台の上で、たった一人で、飛行機での戦争を演じる。これに関してはもう〜〜〜っ（息継ぎ）いくら文章を連ねても、ただ一度舞台を見る迫力を再現することは出来ないでしょう。衣装は軍服にパイロット帽にゴーグル、専用の効果音もなくピアノの音色と肉声のみ、飛行機と言ってもボール紙？を切り抜いた絵があるだけ、背景に空の映像を映し出し、ただそれだけで飛行機の戦闘シーンを表現するのです。飛行機の轟音も肉声、マシンガンなんか手振りと「ダダダダダ！」の口真似。にもかかわらず、身体が震え、息が止まるほどの迫力でした。 はじめは、一幕の終わり。初めて空中戦に遭遇したビリーの、戸惑いと恐怖、それがやがて異様な興奮に飲み込まれていく心情が、どんどん観ているほうに流れ込んでくるのです。落ちていく敵機を執拗に撃ち続け、翼が外れかかっても「かまうもんかー！」突っ込んでいくビリーの、理性が飛ぶ瞬間は、戦場に行ったことのない私にも手にとるようにわかりました。 そして燃料切れで不時着、敵陣に脅えながら塹壕で一夜を明かし、ひっきりなしの爆撃に「俺は全然眠れなかった！」頭を抱えるビリー。夜が明けて彼が見たのは、草木一本残らず焼き尽くされた地獄と、そこに横たわる戦友の無残な死骸。セットはそのまま、舞台に役者は一人きりですので、観客がそれと知るのは、ビリーの息遣いと表情からですが、充分でした。 惨状に後じさったビリーが無伴奏から歌いはじめるのは「空で踊りましょう」この曲はむしろ明るく静かな、スローテンポの曲です。空の上で、生き残るために殺しあう飛行機の一騎打ちが、まるで踊るように見える様を「さあ、空で踊りましょう」とかすかな微笑さえ浮かべて歌いあげる。悲劇に酔うのでもない、泣き落としでもない、誰を責めるのでもない、ただそうするしかない現実。そして一幕は閉じます。 ニ幕冒頭まで生き残ったビリーは、すっかり軍人らしくなっています。「戦うときは感情に溺れちゃダメだ。そうすればたぶん、ちょっとだけ生きていける」自分が生き残るために機体ではなく人間を狙い撃ち、その場限りの快楽を楽しみ、戦友を殺したドイツ兵を憎み、次々敵機を撃墜していく。イギリスでNo.1のスコアを持つアルバート・ボールが戦死すると「そのかわりは俺なのか？」もう戦闘マシンのように空を飛び、たった一人でドイツ軍基地を爆撃するという偉業をも成し遂げる。 メカニック担当が泣いて止めた、この無謀な試みに際しても、朝食を食べてこなかったので胃が痛いだの、何でパジャマ脱がなかったんだろうだの、気の抜けるような日常的なことばかりビリーは言うのですね。帰ってきても出てくるセリフが「やったぞウォルター！これまでにこんなに面白かったことはない」まるで無邪気な少年のような。 このあたりの日常の延長戦加減が、逆にリアルに感じられました。人間、どんなときでも、ずっと悲劇的だったり、英雄的だったりできるわけじゃないですものね。 たとえばマシンガンを持たずに敵地に飛ぶ「自殺中隊」の任務を、想い人に宛てた手紙の中で「刺激的な仕事です」と笑いにはぐらかすような、そのくせ直後に「淋しくてたまりません」本音をごく素直に吐露するビリーの生き方は、おそらく私の感性に合っていたのでしょう。喜怒哀楽はむしろ人よりも感じるけれども、できることなら明るく受け止めて生きていきたい。きっとビリーはそうして、感情と麻痺と発想の転換を日々繰り返し、過酷な空軍を生き残ったのでしょう。 そして退役直前にビリーが遭遇する、ひとつの事件。空中分解する飛行機から生きたまま落ちていくパイロットの目が「一分、二分、三分。俺を見ているのを感じていた」その衝撃を詳細には語ることはなく、それでもう飛ばずに済むことにほっとしながら、ビリーは飛行機を降ります。 ５．総括：ネタバレを超えてうだうだと 当初チラシに載っていたあらすじを読んだ段階では、「戦争もの」それも、お盆に上演、直前に別のカミカゼ特攻隊モノのお芝居を観ていたせいもあり、「反戦もの」かな、と勝手に想像していました。つまり、主人公が悲壮な覚悟の末に戦死したり、或いは恋人や戦友の亡骸にすがって号泣したり、の湿っぽいものを想像していたんです。 ところが。舞台では、ビリーが戦地へ赴き、パイロットに憧れ、陸軍から空軍に移り、戦友の死に遭い、やがて大英帝国空軍の誇る撃墜王となり…ありのままの現実を生き生きと、自己陶酔にならないようむしろ淡々と語っていました。 ビリー・ビショップの人生だけを見れば、戦争のおかげで英雄になり、イギリス国王から勲章を授かるのですから、サクセス・ストーリーとさえ言えます。勲章をつけてもらう場面は本当に嬉しそうで、心の底から良かったねえ、と思いました。ああ、これでハッピーエンドなんだろうな、と。 カナダ産のミュージカルですから、本土決戦の地獄を見たり、核を落された日本の戦争ものとは根本から違うのでしょう。戦うのは敵地で兵士だけ、しかも空軍なら敵や戦友が血が噴出させて死んでいくのを直接目の当たりにすることもそう多くはありません。じゃあ見終わった後、ビリーは戦争で英雄になったんだ万歳！という結論に至るかというと、そうではありませんでした。 ラストシーン。第二次世界大戦が勃発し、戦地へ旅立とうとする若者に、軍の偉い人になったらしいビリーが励ましの言葉をかけます。既に現役を退いたビリーは、杖をつき、第一次世界大戦の頃を懐かしむ様子。自分の息子に、空軍の徽章をつけてやったことを「誇りに思う」と微笑さえ浮かべています。 が、不意にそのやわらかい微笑を翳らせ「また戦争がはじまるとは思ってもいなかった。いったい、何のために戦ってきたんだ…！」押し殺したような、声。苦悶の表情に、込み上げてくる涙。 敵機を撃墜することで英雄になったビリーが、何故泣くのか。それまでに演じられたビリーの半生、戦場で他に選択肢もないまま生き残ることを、ともに味わっていた観客だけが、わかる場面でしょう。言葉で伝えられるものではありません。それだけに、深く、重く。 年老いたビリーが、掠れた声で歌いはじめる「空で踊りましょう」は、やがて朗々と響き渡り「それではみなさん、おやすみなさい。おやすみなさい」やわらかな微笑を残して暗転。刹那、ビリーの頬を伝う涙が光を放ちました。 観客が泣いてカタルシスを得る、というタイプのお芝居ではありません。辛いときも悲しいときも、ビリーはその感情を人に押し付けたりせず、笑いに紛らわしてしまうことのほうが多いですし、ビリーの人生そのものはむしろハッピーエンドです。けれど何かが胸に残る。簡単に言葉にして結論付けてしまえるものではなく、むしろこれから抱え、考えていかなければならない何か。 この舞台の再演を、私は切実に望みます。またどうか、ビリーに会えますように。ビリーとともに生きる、自分に会えますように。心に響く舞台に出会えたことに、いまは感謝しています。 と、まあ、これでも全然書ききれておりませんが（苦笑）脚本（翻訳も。細かいセリフのリズムまで完璧）、演出、音楽（効果音に至るまで。空の表現とか絶妙でした）と演奏、照明、舞台装置、役者、すべてトータルして、隅々まで計算し尽くされた実に素晴らしい舞台でした。いやもう、贔屓の役者が演じたと言うことを取り払っても、心の底から拍手を送りたいです。 役者については、言わずもがな。17役も演じわけるなんてタイヘン、と脳天気に思っていたのですが、演じわけるだけじゃダメなんですよね。17人分の人柄とそこに背負った人生や価値観を演じ分けた上で、物語を語らなければならない。落語じゃないんですから、物語が伝わらなければ意味がない。この当たり前のことを、舞台を見て初めて思い知らされました。そして語られた物語は、深く、静かに、力強く、激しく胸に響きました。この凄さは、いくら書いても伝わらないんでしょうねえ。いくら書き立てても足りないと思うので、このへんにしときます。 ただもう本当にハードな舞台で、４日目あたりは声も身体も無茶苦茶辛そうで、倒れるんじゃないかと冷や冷やしちゃいました。←リピーターってこういう見方するからや〜ね。しかしその翌５日目の２回公演の日は怖いほどの迫力で、私的にはいちばん見応えがありまして、いろいろな意味で凄い！と思ったものでした。 ６．おまけの17役一言レビュー：も〜いい加減にしとき（笑）以下お暇な方専用。 (1)士官学校の上級生：サディストっつーか、完全にイッちゃった目が凄かったです。苗字が同じだからって自分を「パパ」なんて呼ばせて、素直で可愛いビリーはさぞかしいぢめがいがありましたでしょうねえ。 (2)士官学校の軍務局長と同級生タウンゼント：プログラムのコメント見ながら書いたらペローさんのほうしかいないんですが、いかにも情けない坊ちゃんしゃべりのタウンゼント、私は好みでした（笑）ペローじいさんは声のみ出演なので「あ、これも駒田さんの吹き込みだ」と気付くまでに数秒を要しました。本当に声は悪者なんだから〜。 (3)酔っ払いの仕官：すんごい、へろへろの酔っ払いさんです。しらふのビリーとの対比が見事でしたねえ。「空？」と聞き返されたときに「そーら！」と頷いていたのは、あれが酔っ払いの駄洒落だったのか、単なる気のせいだったのかがちょっと気になっています。 (4)陸軍省の人：小道具のメガネの使い方がたまりません。そして強烈な独特の間。「もひとつ間違いないぞ！」の日が最高に面白かったです。 (5)レディ・セント・ヘリアー：イギリスでビリーの面倒を見る上流階級のお婆ちゃんなんですが、とってもラブリー。頭のてっぺんから声を出しているのはあなたでしょーっという声、くしゃくしゃっとにこやかな表情（いや、見た目は軍服の駒田さんなんですが、宮崎アニメに出てくるようなしわしわののお婆ちゃんに見えたんですよー）、典型的な英国淑女らしい厳格でせっかちな性格、時折垣間見せるお茶目な仕草。お茶を上品に飲めたビリーに「チュッ」とキスをする場面には愛を感じましたねえ。二日酔いのビリーが「おはよう、おばあちゃん」と手にキスして、嫌がってるのも可愛かった。ちなみに手にキスするのも嫌がるのも、役者は一人。同時に両方見た気になってるから不思議ですにゃあ。 (6)執事のセドリック：レディ・セント・ヘリアーの執事。とにかくでかい。膝くらいまでしかない？お婆ちゃんの手を引いて椅子までお連れしたりして、健気にお仕えしてます。田舎モノのビリーには威嚇的。「入れ」を言う前に目元を２度もヒクヒクさせるのがおかしくて仕方ありません。←このへんの面白さは見た人にしかわかりませんがー。 (6.5)空軍自殺中隊の上官：名もなき人なんですが、テンション高くて面白かったです、この人。「集まれ集まれー。どうすればいいと思う？なに、爆弾、下ろせえっ！？」こういう勢いのある人、好きだ。上司には絶対欲しくないけど。 (7)軍医：大爆笑大賞。この人が出ている間ずーっと笑い転げてました。これも見なきゃわからんのですが、激烈無性に笑いのツボ。もう出た瞬間からおかしい。うちの職場の主治医にソックリなんですもの〜。 (8)ヒギンズ連隊長：この人も相当におかしかったです。青筋立てて、小道具のムチのブルブル震え具合がポイント。プログラムに「ボーイフレンド紹介しましょうか？」って書いてあるんですが、この人そういう人なんでしょうか？ (9)ラブリー・エレーヌ：客いじりのところで既に触れましたが、とっても妖艶な女性です。あの腰を揺らすしゃなり歩き、流し目、セクシーに開いた微妙に歪んだ唇、ハスキーヴォイス、えっちな指技、たまらん！客に背中を見せての一人キスシーンがあるのですが、髪をかき撫でる指先がずきゅーんと下腹に応える？えっちさです。どうもご馳走様でした。←なにが？ このシーンの直後に、想い人マーガレットへの手紙になるあたりがまた、男の人ってもう。ちなみにマーガレットは直接演じられていませんが、エレーヌさんとは対照的な清楚で慎ましやかなタイプです。（想像断定）そしてビリーからの愉快な手紙をニコニコと読むのでしょう。私の好みから行けば（何の好みだ）絶対にマーガレットなのですが、エレーヌさんの顔撫で技を堪能しちゃった今回は、うーん、引き分け。←だから何なのよ。どれも駒田さんなんだってば。 (10)アルバート・ボール：こちらはまだビリーが英雄になる前の、空の英雄。ロマンチストで、若くして命を落としたその悲劇性も含めて、二枚目です。澄んだ黒い、真っ直ぐな瞳、ややニヒルな表情、物静かな声。同じ世代の同じ飛行機乗りを演じるのに、ビリーとはまったく表情が違うんですね。「祖国に栄えあれ、だ」若者特有の、透明な精神の哀しいまでの美しさ。直接出てきたのはワンシーンだけでしたが、彼の印象は鮮烈でした。 (11)メカニック担当のウォルター・ボーン：ビリーの飛行機整備担当の職人気質のおじさん。ビリー大尉を敬愛し、死地に赴こうとするのを泣いて止め、生還したビリーを真っ先に迎えた人。このお芝居は、こういう脇役の使い方が絶妙なんです。ビリーの心理だけでなく、彼が周囲にとってどういう存在であったか、ひいてはビリーが何故そうするに至ったかを知ることが出来ます。躍起になってゴーグルを渡そうとしないウォルターと「温かい励ましの言葉をありがとうウォルター！」飽くまで冷静な素振りのビリーの掛け合いが好き。目に見えない温かい信頼を感じました。 (12)空軍元帥：葉巻シーハー系の、軍のお偉いさん。見事なデブ振りです。痩せてるのに太ってました。まあ不思議。 (13)バッキンガム宮殿の副官：元ネタを知らないのですが、嫌味な人。思うに国王の広大なトイレをお手伝いするお仕事の人なんだろうなー。（いや、歴史背景さっぱりわかってないんですが、そんな仕事ありそうじゃないですか、宮殿って） (14)バッキンガム宮殿の士官：腕組んで偉そうに歩いてくるんですが、遅刻して迷子になっていたビリーにはとってもやさしかったです。きっとトイレ担当者と違って見栄えのいい仕事をさせてもらっているんでしょう？←適当な思い込み。 (16)国王：この人、一発ネタですが。国王が下賎な口きいてるーっ！？観客とビリーが一瞬「へ！？」同じ顔で首を捻るんですが、その後ビリーは素直に「王様が俺に15分も話をした」感動。純朴でええ子じゃ。 (17)ビリー・ビショップ：いい奴です。若い頃はやんちゃで、でも素直で純朴で、幼馴染（推定）と結婚しちゃったりして、辛いときや悲しいときにも自己陶酔せず、真摯に前向きに生き延びることを考えていて。流れには逆らわないけれど、自分を見失うことはない。彼の生き方には、とても共感できました。こういう役の解釈を見ていると、私が駒田さんの演技に惹かれるのは、その技の見事さだけでなく、滲み出る生き方の根本に似通った部分があるからなんだろうなと思います。（素人の身勝手な解釈ですがね） おそらく他の人が演じたら、ビリーの性格は別のものになる。その意味で、またビリーは駒田さんで見たい。駒田さんが演じる等身大のビリーは、いつのまにか私の心の縁に立ち、無言の微笑で問い掛けています。戦争に止まらず、生きるということを。お芝居が終わった今でも。 （とりあえずお芝居が終わったと言うのに、ビリーの脳内ソング＆ダンスは止まりません。その日のうちに文章を書けばよかったのでしょうが、今回はちと余韻を楽しみすぎて醗酵気味の模様。あー、まともな人間に戻るのはいつかしらん） …っつか、これだけ書いて、まだ書き残しがあるって、どうよ（笑） |